ハワイからのコンテンツ: 海の中を覗いてみれば

ニシキアナゴの話

今年の夏休みも、家族揃って日本に帰省しました。今年は数年ぶりに名古屋港水族館にお邪魔することができ、子供達も大喜びでした。以前お話ししたことがありますが、長女はチンアナゴが大好きです。水族館でも色々とチンアナゴグッズを購入していました。ところで、チンアナゴは白地に黒い斑点がたくさんありますが、水族館でよくチンアナゴと一緒に展示されている、オレンジと白の縞模様のチンアナゴに似た魚をご存知ですか?今回はこのチンアナゴに似た魚、ニシキアナゴのお話しをさせていただきたいと思います。 ニシキアナゴはチンアナゴと同様、ウナギ目アナゴ科チンアナゴ亜科に属する魚です。体の模様以外はチンアナゴにそっくりで、体長も大きいもので40cmほどになりますが、その体のほとんどは砂の中に隠れていて、頭部と体の前方だけを砂から出しています。 生育しているのはインド太平洋西部の熱帯域で、日本でも沖縄などで見られますが、残念ながらハワイには生息していません。以前チンアナゴは英語でgarden eelと呼ばれると言いましたが、もっと細かく言うと、チンアナゴはspotted garden eel(spottedは斑点のある、の意)、ニシキアナゴはsplendid garden eel (spleendedは華麗な、という意)と呼ばれています。 チンアナゴ同様、ニシキアナゴも流れの比較的速い砂底で流れてくる動物プランクトンを食べています。チンアナゴやニシキアナゴがみんな同じ方向を向いているのは、餌の流れてくる方向に合わせて向きを変えているからなんですね。...

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アカウミガメの話

前回はタイマイのお話をさせて頂きましたが、日本で一番頻繁に見ることのできるウミガメはアカウミガメではないでしょうか。アカウミガメはハワイでは見ることができませんが、日本にはアカウミガメの産卵地が各地に存在します。そこで今回は、このアカウミガメのお話をさせて頂きたいと思います。 アカウミガメは爬虫綱カメ目ウミガメ科アカウミガメ科に属するウミガメです。甲羅の長さは100cm、体重は重いもので180kgほどにもなり、アオウミガメよりはやや大きくなります。一番の特徴は頭部が大きいことで、英語名Loggerhead turtleのloggerheadとは「大きな頭」という意味です。アオウミガメが海藻や海草、タイマイが海綿を食べるのに対し、アカウミガメは比較的雑食性で、カニなどの甲殻類や貝などを食べます。 日本では和歌山県、日南海岸、屋久島などで数多く産卵されていますが、時々ニュースになる日本国内でのウミガメの産卵は、アカウミガメのものです。近年では産卵場所を確保するなど、保護活動に力を入れている地域も多いようです。 数年前にはアカウミガメが産卵する町が舞台の朝の連続テレビ小説がありましたね。以前、研究の一環で日本人とウミガメの関わりについて調べていた時に、浦島太郎に出てくるウミガメがアカウミガメだということを知りました。以来アカウミガメを見るたびに、「浦島太郎はこのウミガメに乗って竜宮城へ行ったんだな。」なんて考えてしまいます。...

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タイマイの話

以前にも何度か、ハワイで最も頻繁に見られるウミガメはアオウミガメだというお話をしましたが、アオウミガメ以外にハワイで見られるウミガメはタイマイで、ハワイ語ではHonu‘eaと呼ばれています。数はとても少ないですが、ハワイ島、マウイ島、モロカイ島、オアフ島の限られた海岸で産卵することが知られています。タイマイは日本でも見ることができ、その甲羅は以前、鼈甲の原料として重用されました。今回は、このタイマイについてお話させていただきたいと思います。 タイマイは、カメ目ウミガメ科タイマイ属に属する爬虫類の一種です。甲羅の長さは1m前後、体重は70kgほどになり、アオウミガメよりはやや小ぶりです。一番の特徴はその尖った嘴(吻端)で、英語名ではHawksbill turtle(鷹の嘴を持つカメ)と呼ばれています。もう一つ面白いのは、タイマイの主食が海綿であることでしょう。その尖った嘴で、サンゴや岩の間に生息する海綿を穿るようにして食べています。実は海綿は毒性があるため、他の動物からは餌としては避けられています。海綿を主食とするタイマイも肉に毒があるため、食用としてはあまり向いていません。 タイマイは乱獲や開発などによる生息地の減少によって生息数が激減し、絶滅危惧種に指定されています。ご存知の方も多いと思いますが、現在ではワシントン条約によってタイマイ(の甲羅)の輸出入が禁止になっています。...

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マグロの話

ハワイの人はよくマグロを食べます。スーパーに行けばどこでも当たり前にアヒポケがありますし、お寿司屋さんでもマグロは人気です。先日日本に帰省した際、久しぶりに葛西臨海水族園に行ってきました。展示されていたマグロが大量死したニュースはみなさんご存知だと思いますが、1匹だけ残ったマグロの泳ぐ姿もまた格好良かったです(残念ながら、私が訪れたのはマグロが追加で導入される直前でした)。今回は、このマグロのお話をさせていただきます。 マグロはスズキ目サバ科マグロ属に属する回遊魚です。回遊魚とは、成長段階や環境によって生息する場所を泳いで移動する魚のことです。英語ではTuna(ツナ)と呼ばれますが、実はツナはカツオなどの近縁の魚も含んだ呼び方になります。マグロはかなり大型の魚で、大きな個体では3mを超えるものもあります。マグロの特徴といえば、泳ぎ続けていないと呼吸ができなくて死んでしまうことでしょう。このためマグロは寝ている間も泳ぎ続けています。 マグロの水銀値について聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。私も妊娠中に、妊娠中、授乳中、また小さな子供はマグロの摂取量に気をつけるようにアドバイスされました。生態系の頂点にいるマグロには、生物濃縮によって水銀が体内に溜まってしまうのです。最近の研究でも、ハワイで獲れるマグロの水銀値が年々上昇しているという報告がありました。今の所はまだすぐに健康に害を与えるほどの量ではないそうですが、できれば安心して美味しいマグロを食べたいですね。...

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タコクラゲの話

前回は最もポピュラーなクラゲであるミズクラゲのお話をさせて頂きました。ワイキキ水族館には、クラゲの展示をして欲しいという個人からの寄付で、クラゲ展示コーナーが作られています。その中に、8本の長い腕を持ち、丸い傘を頻繁に開閉して泳いでいるクラゲがいます。今回は、このタコクラゲというクラゲについてお話させて頂きたいと思います。 タコクラゲは、刺胞動物門鉢虫綱根口クラゲ目タコクラゲ科に属しています。成体の傘の直径は12cmくらいになります。ミズクラゲと違って、傘の周辺には触手がありませんが、傘の下側中央の口の周りにフリルがたくさん付いたような8本の口腕があり、この口腕の先に長い棒状の器官が付いています。しかし、この棒状の器官は触手ではなく、その役割はよくわかっていません。タコクラゲという名前は、もちろんその8本の長い腕を持つ形態がタコに似ているから付けられたものです。ミクロネシアではタコクラゲは環礁に囲まれた静かな湾内で見られるため、英語ではlagoon jellyと呼ばれています。 タコクラゲが面白いのは、体内にサンゴと同じ褐虫藻という単細胞の海藻が共生していることです。そのため体の色がちょっと茶色っぽくなっています。タコクラゲ自身も微小なプランクトンを捕食しますが、褐虫藻からもその光合成産物を栄養として受け取っています。そのため、中には日光がよりあたる所を求めて動くものもいるようです。タコクラゲもミズクラゲと同様、刺されてもあまり痛くありませんので、海中で遭遇してもあまり怖がらなくても大丈夫ですよ。...

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ミズクラゲの話

私が子供の頃は、クラゲを展示している水族館なんて無かった気がしますが、最近はクラゲを展示をする水族館が増えてきていますよね。我が家の長女を初めてワイキキ水族館に連れて行った時、ミズクラゲの水槽にしがみつく様にして見入っていたのを思い出します。ミズクラゲといえば、子供の頃に海水浴に行くと、よく大発生していたことを思い出します。今回は、このミズクラゲのお話をさせて頂きたいと思います。 以前「クラゲの話」の中でもお話しましたが、クラゲはサンゴと同じ刺胞動物門に属する動物で、その中でもミズクラゲは鉢虫綱旗口クラゲ目ミズクラゲ科に属しています。このクラゲは日本沿岸で最もよく見られるクラゲで、世界中の海に広く分布しています。そのまん丸な形から、英語ではmoon jellyと呼ばれています。体長は生体で15?30cmで、よく見ると傘の周りに細くて短い触手がたくさん付いています。傘の下側の中央に口があり、その周りから4本の口腕と呼ばれる腕が出ています。 刺胞動物は皆、刺胞という毒を持つ期間を持っているので、もちろんミズクラゲにも刺胞はあります。ミズクラゲの刺胞は傘の周りの短い触手にあって、ここで餌の小さなプランクトンを捕まえます。しかし、この刺胞は小さなプランクトンを捕まえるのに十分な強さしかなく、人間が刺されたとしてもほとんど痛みは感じません。私が子供の頃も、海水浴場でミズクラゲが大発生していても構わずに遊んでいました。まあ、ちょっと気持ちは悪かったですが・・・。...

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トゲチョウチョウウオの話

熱帯魚といえば、チョウチョウウオという名前を聞かれたことがあるのではないでしょうか?ハワイにももちろんチョウチョウウオはいるのですが、一口にチョウチョウウオと言っても、実はたくさんの種があるのです。今回はその中から、私の好きなトゲチョウチョウウオという種のお話をさせて頂きたいと思います。 トゲチョウチョウウオは、スズキ目チョウチョウウオ科に属する魚です。紅海、太平洋、インド洋と広く分布していて、日本でも特に沖縄ではよく見られます。体長は20?23cmと、チョウチョウウオの中では大型になります。背ビレの後ろの方が棘のように細く伸びていることから、この名前がつきました。英語名はThreadfin butterflyfish(threadfinは糸状のヒレ、butterflyfishはそのままチョウチョウウオの意)です。 私がこのチョウチョウウオが好きなところは体の模様で、白地に直交する黒い線が特徴です。背ビレから尾ビレにかけてが黄色く、背ビレの端に黒い斑点があります。また、目を通る黒い帯状の模様があり、それが私にはパンダのように見えて可愛いのです(あくまで個人的な意見ですが、、、)。ちなみに、幼魚は見た目がちょっと異なり、背ビレはオレンジ色になります。また、紅海のトゲチョウチョウウオは背ビレの黒い斑点がないそうです。haはとげとげ...

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ヘコアユの話

前回はヨウジウオのお話をしましたが、ワイキキ水族館ではトゲウオ目の魚の仲間としてヨウジウオやタツノオトシゴとともにもう一つ、面白い魚が展示されています。頭を真下に、尾側を真上に向けて縦に泳いでいるこの魚は、ヘコアユと呼ばれています。今回は、このヘコアユについてお話しさせて頂きたいと思います。 ヘコアユは上述の通り、トゲウオ目ヨウジウオ亜目ヘコアユ科ヘコアユ族に属する魚です。体は細長く、縦方向にとても平べったくなっていて、体側に黒い縦帯模様がはいっています。体表がうろこに覆われていなく、甲板という鎧のような殻に覆われていて、それがエビの殻に似ていることから英語ではShrimpfishと呼ばれています。また、薄っぺらな体がカミソリの刃に似ていることからRazorfish(razorはカミソリの刃)とも呼ばれます。口先が細長く突出していて、 その先端に小さな口があり、動物プランクトンなどを捕食しています。 ヘコアユの尾側の先端はよく見ると尖っていて、これは実は尾ひれではなく、背びれの一部です。尾ひれは腹部の方に移動しています。ガンガゼという、棘が長くて刺さると痛い有毒ウニがありますが、このガンガゼの周りに群れていることが多く、薄っぺらいからだと頭を下にした泳ぎ方は、このガンガゼの棘の間に逃げ込みやすいと考えられています。縦帯模様もガンガゼの棘にカムフラージュするのにちょうど良いようです。...

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ヨウジウオの話

ワイキキ水族館では昨年、「トゲウオ目の仲間?タツノオトシゴ、シードラゴン、ヨウジウオとその仲間」という展示が始まりました。タツノオトシゴやシードラゴンについては以前お話しさせて頂きましたが、あのような見た目でも立派な魚なのです。トゲウオ目には、面白い見た目の魚が属しています。そこで今回は、もう一つのヨウジウオという魚についてお話しさせて頂きたいと思います。 ヨウジウオはトゲウオ目の中でもヨウジウオ科ヨウジウオ属に属する魚です。英語ではpipefish(パイプフィッシュ)と呼ばれています。ヨウジウオの仲間はみんな細長い体をして、それが英語名の由来になっています。口も細長く、小さな口先から動物プランクトンや小型の動物の幼生を吸い込むようにして食べています。尾ひれが団扇のような形なのがとても可愛いです。ヨウジウオはタツノオトシゴよりは早く動けますが、それでも動きは遅く、周囲にカモフラージュして隠れてじっとしていることが多いです。 ヨウジウオはタツノオトシゴと同様、オスが「出産」する魚でもあります。メスはオスの育児嚢に卵を産み、オスは卵が孵るまでそこで育てます。卵は一度に1000個ほど産み付けられるので、卵が孵った時はたくさんの稚魚がオスから出産される事を考えると、一度その出産シーンをこの目で見てみたいと思いました。...

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ケヤリムシの話

ハワイの海で泳いでいると、たまに棒のようなものの先に羽のようなものを広げた状態の生き物を見かけることがあります。ちょっとでも刺激があると、この羽のようなものをシュッと一瞬で引っ込めてしまうこの生き物、実はゴカイの仲間なのです。今回は、この不思議なケヤリムシという生き物についてお話ししたいと思います。   ケヤリムシは、環形動物門多毛鋼ケヤリムシ目ケヤリムシ科に属する生き物です。環形動物というのは、地上でいうとミミズと同じ仲間です。ケヤリムシという名前は、その見た目が大名行列の先頭の毛槍を連想させることからきていますが、英語ではやはり見た目からfeather duster worm(feather dusterは羽のはたき)と呼ばれています。毛槍やはたきの棒にあたる部分は、泥や砂を粘液で固めて作った管で、この中に柔らかい体が収まっています。この管は、岩などに固着していて動きません。羽のような部分は触手で、この触手には呼吸と、食物をろ過して捕食する役割があります。また、管の材料となる砂や泥も、この触手で集めています。 ケヤリムシは、管の部分が13cm前後、羽の部分は大きいもので広げると直径15cmくらいになります。この大きな羽が、一瞬で引っ込むのを見るのはとても面白いです。しかし、羽を広げている姿もなかなか綺麗ですので、もし見つけたら少しの間観察してみてください。...