ハワイからのコンテンツ: 全コンテンツ

シャワーツリー(その1)

シャワーツリーは、マメ科の高木で、ハワイでは街路樹として広く植えられており、春から秋にかけて綺麗な花を咲かせます。シャワーツリーが属するナンバンサイカチ属は、約30種からなり、熱帯地域に広く分布します。       ハワイで一般的にシャワーツリーと呼ばれる木には、ゴールデンシャワー(C. fistula)、ピンクアンドホワイトシャワー(C. javania)、ピンクシャワー(C. grandis)、レインボーシャワー(Cassia x nealiae)の4種類があります。どれも人為的に植えられていて、野性化はしていません。     ゴールデンシャワーは、インド原産のシャワーツリーです。1880年以前にハワイに移入され、街路樹として広く植えられました。高さは約10mになります。夏にブドウの実のように吊り下がった黄色い花が咲きます。さやは長さ30~60cmで、たくさんの種子が入っています。近年は、ゴールデンシャワーのさやが邪魔だということで、さやをほとんどつけないレインボーシャワーに植え替えられる傾向にあるそうです。葉は複葉。小葉は先の尖った卵形で、レインボーシャワーの小葉より明るい緑色で長いのが特徴です。...

ウニの話

毎年夏休みは家族と日本に帰省します。今年も2週間ほど滞在してきました。日本滞在中の一番の楽しみは食事です。ローカルの友達にも「日本に行ってくる」と言うと「美味しいもの食べて来るんだねー。」と言われます。何を食べても美味しかったのですが、滞在最終日に頂いたお寿司は絶品でした。お寿司と言えば、ウニは外せません。そこで今回は、ウニのお話。 ウニは棘皮(きょくひ)動物門に属していて、同じ棘皮動物の仲間にはヒトデやナマコがいます。トゲトゲに覆われていますが、私達が良く見かけるものは毒があるわけではないので、触っても大丈夫です。トゲの長いものは毒がある事があるので、気をつけましょう。ウニの多くは草食性なので、 ハワイ大学の研究所ではウニを飼って水槽内に海藻が蔓延らないようにしていることも。ウニの口はトゲトゲとは反対側の裏面中央にあり、ウニをひっくり返してよく見ると小さい穴があるのが分かります。実験でウニの解剖をした時に一番面白かったのが、「アリストテレスの提灯」と呼ばれる器官です。「なんでアリストテレスの提灯?」と、名前のインパクトが強かったのですが、これは口のすぐ内側にある咀嚼器で、歯の役割をしています。 ハワイ大学にはウニの研究をしている人もいます。自生種(ハワイに元々いる種)のウニを使って外来種の海藻を減らす方法など、海藻が専門の私にとってもおもしろい研究です。しかし以前、ウニの研究をしている大学院生(女性)がウニを手の平に乗せて「可愛いでしょ~。」と言っていた時はちょっと笑えました。可愛いか可愛くないかと聞かれたら、彼女には申し訳ないけど正直可愛くはないです。日本人の私には、ウニは「可愛い」ものではなく、やはり寿司ネタにしか思えないのでした。...

ハワイのトレイルその27~ピヘア(カウアイ島)その3

ハワイのトレイルその27~ピヘア(カウアイ島)その2の続きです。 木の歩道が始まる辺りからは、オーヒアの他に、ラパラパ、コリイ、クーカエモアなどのハワイ固有種の植物も多く見られます。また、カウアイ・アマキヒ、アニアニアウなどの、カウアイ島のみに生息する野鳥の姿も見ることができるかもしれません。イイヴィも昔はたくさんいましたが、残念ながら近年では滅多に見られなくなりました。 T字路から約1.6km進むと、アラカイ・スワンプ・トレイルとの4叉路の交差点があります。交差点を真っすぐ進むと、やがて木の歩道が終わり、カワイコーイー・ストリームに向かってスイッチバックを繰り返す長い下り道になります。浅い小川をまたいで渡るところが幾つかあります。左手にはカワイコーイー・ストリームの清流が見えてきます。 やがてカワイコイ・キャンプ場に到着します。ここがピヘア・トレイルの南側の入り口で、このハイキングの折り返し地点となります。後半は、来た道を戻ります。私はカワイコーイー・ストリームの気持ちよい川沿いが好きで、よくこの辺りの河畔で弁当休憩をとってから戻ります。 おわり 場所:ハエナ(カウアイ島) コース:往復 往復距離:約12.2km 高低差:約87m  ...

Dr. Isabella Abbott

シグ・ゼーンといえば、ハワイ島ヒロにある、ハワイアンウェアのお店。オリジナルのデザインが地元の人にも大人気で、私もオアフでシグを着ていると「それ、シグ・ゼーンでしょう?素敵ね。」と必ず声をかけられます。そのシグ・ゼーンがワイキキ水族館とコラボしたデザインを発表しました。Ka Uluwehi O Ke Kaiと名付けられたシリーズは、2011年に亡くなったハワイ大学の海藻学者、ドクター・イザベラ・アボットの誕生日を記念して作られたものです。そこで今回は、ドクター・アボットのお話をさせて頂きたいと思います。 ドクター・アボットはマウイ島ハナ生まれ。彼女はネイティブ・ハワイアンの女性で始めて科学の分野で博士号を取得した人です。さらに、スタンフォード大学の生物科学部において初めて教授職に就いた女性でもあります。世界的にも有名な海藻の分類学者で、100以上もの論文を出版されました。彼女の名前から取って名づけられた海藻の種もあります。晩年はハワイ大学の名誉教授として精力的に活動し、亡くなる数ヶ月前まで、よく大学のオフィスで研究している姿をお見かけしました。 私がドクター・アボットと初めてお話させて頂いたのは、私がオアフではあまり見かけない珍しい海藻を見つけて採ってきた時のこと。大学院生に聞いたところ、彼も見たことが無いので隣のオフィスにいるドクター・アボットに聞いてみたらいいよ、と強く勧められました。当時私はまだ学部生で、有名な海藻学者とお話をするという突然の機会に非常に緊張したのを覚えています。ドクター・アボットは私の取ってきた海藻を見て、その珍しい種類のものに間違いないと教えて下さいました。この時の事は、私の大切な思い出となっています。...

ハワイのトレイルその27~ピヘア(カウアイ島)その2

オーヒアの森から先は、アパパネの他にカウアイ・エレパイオも見ることができるかもしれません。エレパイオは、木の枝や幹の低いところや地面におりてくることもあるうえに、人間をあまり恐れないので、かなり近くで見ることができる場合もあります。エレパイオという名前は、この鳥の特徴的なさえずりから付けられたものです。尾羽をピンと斜めにあげたポーズが可愛らしい鳥です。 トレイルには、入り口の距離を示す小さな標識が0.25マイル(約400m)ごとに設置してあります。入り口から1マイル(約1.6km)を印す標識の手前からは、急な上り坂になります。地面が深く浸食されていて、特に雨のときには滑りやすいので、足下に気をつけながら登ります。 坂を上りきると、T字路になります。標識があり、左矢印はPihea Vista、右矢印はPihea TrailとAlakai Crossingと書いてあります。ここを右に進みます。T字路から少し下ると道は木で作られた歩道になります。比較的手軽なトレッキングコースとしては、ここを往復地点として往復約3.6kmのコースにするのもよいでしょう。 その3につづく 「画像1」カウアイ・エレパイオ 「画像2」T字路と標識 「画像3」木で作られた歩道...

海藻標本の作り方

もう夏も終わりですね。ハワイの小学校は夏休みが開けると新学年になるので、夏休みの宿題がありません。しかし、日本の小学生は夏休みの宿題がたくさん出ますよね。私が小学生1年生のとき、初めての夏休みの自由研究で提出したのが海藻の標本でした。海藻標本の作り方なんて知らなかったhawainoこの時は、水分を取るために挟んでいた新聞紙に海藻がくっ付いてしまったり、標本にした海藻の種類を識別するのに苦労したりしたことを覚えています。そこで今回は、夏休みの自由研究に使えるかもしれない(?)、海藻標本の作り方についてお話しさせて頂きます。 海藻標本の作り方はいろいろあるようですが、ここでは私がいつもやっている方法をご紹介します。1)まず海で海藻を採取します。採取にはジップロックのような厚手で口を開閉できる袋が便利です。2)採取した海藻を持ち帰り、砂や付着物を取り除きます。この時、真水にしばらく浸けておくと良いらしいですが、私はちょっと洗うくらいです。3)きれいになった海藻を厚手の紙(画用紙など)の上にきれいに広げ、その上にクッキングシートをかぶせます。これで次の行程で海藻が新聞紙にくっ付きません。4)3の上下を、数枚重ねた新聞紙などの吸水紙で挟み、さらにダンボールで挟みます。5)上に錘を載せてそのまま置いておきます。6)できれば毎日吸水紙と段ボールを交換します。これで早ければ2~3日で海藻標本の完成です。 押し花と同じですので、きれいな海藻の標本ができたら、ラミネート加工してしおりなどにするのもおススメですよ。...

ハワイのトレイルその27~ピヘア(カウアイ島)その1

ピヘア・トレイルは、カウアイ島のコーケエ州立公園にあるハイキングコースのひとつです。主要道路の駐車場からアラカイ・スワンプに入ることができる唯一のトレイルでもあります。ハイウェイ550の終点であるプウ・オ・キラ展望台がトレイルのスタート地点です。プウ・オ・キラ展望台には広い駐車場はありますが、トイレはありません。トイレ休憩が必要な場合はその手前のカララウ・バレー展望台で済ませる必要があります。 展望台を過ぎて、広い土の道を下ります。特に雨の日は滑りやすいので注意が必要です。晴れている日には左手の崖の上からカララウ・バレーの素晴らしい眺めが望めます。また、オーヒアの木のこずえではアパパネが花の蜜を吸っている姿を見ることができるでしょう。 午後には雲や霧がでて下の景色は見えないことが多いので、カララウ・バレーの景色を見るなら、早朝に出かけたほうが晴れている確率は高いようです。もし眼下が雲や霧に覆われていて何も見えなくても、しばらく待っていると、短時間だけでもわずかに霧が晴れることもあります。下り道が終わると、比較的平坦なオーヒアの森が続きます。 その2につづく  ...

ハワイアンモンクシールの話

ハワイの学校は5月が学年末、6月から夏休みです。小学1年生の長女は、学年末のプロジェクトでクラスメートと海の生き物について調べていました。先日、その成果を発表する機会があり、旦那と一緒に見に行ってきました。クラスがいくつかのグループに分かれ、それぞれ一つの生き物について調べていたのですが、その中で目についたのがハワイアンモンクシール。そこで今回は、このハワイアンモンクシールのお話です。 太平洋の真ん中にあるハワイ諸島には、固有の哺乳類は2種類しか存在しません。一つは陸上にいるコウモリ、そしてもう一つがハワイアンモンクシールです。ハワイアンモンクシールは絶滅危惧種に指定されていて、現在その数は1200頭余りと言われています。モンクシールの数を回復させるべく色々な対策が取られているのですが、残念ながら減少し続けています。一番の天敵はサメですが、捨てられた漁網などの海洋ゴミに絡まってしまうことも深刻な問題です。ハワイの他にカリブ海と地中海にもモンクシールの仲間がいる(いた)のですが、カリブ海のモンクシールは1952年に既に絶滅、地中海の方も絶滅に瀕しています。 ハワイアンモンクシールはそのほとんどが主要八島ではなく、北西ハワイ諸島に生息しています。しかし近年ではたびたび主要八島にも現れ、ワイキキでも見られることがあります。私もちょっと前にダイアモンドヘッドの下で海藻を採っていてモンクシールが寝ているのに気付かず、吠えられました。野生ではなかなか見ることが難しいハワイアンモンクシールですが、ワイキキ水族館とシーライフパークで見ることができます。...

ハラ・ペペ

ハラ・ペペは、ひょろ長い幹と、枝の先から垂れた細い葉が特徴の木です。全部で6種あり、すべてハワイの固有種です。そのうちの3種は、合衆国魚類野生生物局によって絶滅危惧種に指定されています。P. aureaはカウアイ島、P. auwahiensisはモロカイ島とマウイ島、P. fernaldiiはラナイ島、P. forbesiiとP. halapepeはオアフ島、P. hawaiiensisはハワイ島に分布します。 高さ9mくらいに成長します。外見はイエイエに似ていますが、イエイエが自力で立つことができずに地面を這うか、他の木に巻き付いて登るのに対して、ハラ・ペペは自立して伸びます。また、イエイエの葉には主脈の上と縁に小さなノコギリ状の棘が並びますが、ハラ・ペペの葉には棘はありません。花は黄色で、続いて直径約2.5cmの赤い実をつけます。 フラのハーラウ(学校。元々はカヌーを保管したりフラを練習したりするための大きな建物のこと)では、花が咲いたハラ・ペペの枝が祭壇に置かれて、フラの女神カポに捧げられるそうです。 日本語名:― ハワイ語名:hala pepe、le’ie 英語名:― 学名:Pleomele spp. 分類:リュウゼツラン科 (Agavaceae) その他:ハワイ固有種(endemic)、P. fernaldii / P. forbesii / P. hawaiiensisの3種は絶滅危惧種(endangered)  ...

タツノオトシゴの話

私の友人が江ノ島でゴミ拾いを主催しています。彼らは、昔は江ノ島にたくさん生息していたタツノオトシゴをもう一度呼び戻そうと、積極的に活動しています。私はハワイで一度だけ、海藻の採取中に海の中で野生のタツノオトシゴを見た事があります。今回は、このタツノオトシゴのお話をさせて頂きたいと思います。 タツノオトシゴは、とんがった口とくるっと巻いた尻尾が特徴ですが、実は立派な魚の仲間なのです。ヨウジウオ科タツノオトシゴ属に属しています。よく見ると首に見える部分にエラ、背中には背ビレが付いています。他の魚と明らかに違うのは、直立しているところでしょう。 タツノオトシゴが面白いのは、オスが出産することです。といっても、正確にはオスが“妊娠”するわけではありません。他の魚と同様、卵を産むのはメスですが、メスはその卵をオスのお腹にある「育児嚢」という袋の中に産み落とします。卵はオスの育児嚢の中で受精し、孵化します。孵化した子供達はその後しばらくオスの育児嚢で過ごした後、オスのお腹から“出産”されます。私がハワイの海で見たタツノオトシゴはお腹が大きく見えたので、多分あれは”妊娠”したオスだったのではないかと思います。...