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オーヘロ

オーヘロは、ブルーベリーの仲間です。V. calycinum、V. dentatum、V. reticulatumの3種あり、すべてハワイ固有種です。古代ポリネシア人がハワイで見つけた植物の中では、数少ない食べられる果実のひとつでした。今日では果実は生で食されるほか、加工してジャム、シロップ、パイ、タルトなどが作られます。葉は、乾燥してレイに使われます。 V. calycinumは、高さ1~5mで、オーヘロの中で最も大きく育ちます。オーヘロ・カウ・ラーアウ(ʻōhelo kau lāʻau)とも呼ばれます。直訳すると「木に置かれたオーヘロ」という意味です。V. dentatumは、高さ0.3~3mで、湿った森でみられます。V. reticulatumは、高さ0.1~2mで、3つの中では最も多くみられます。オーヘロ・アイ(ʻōhelo ʻai)とも呼ばれます。直訳すると「食べ物のオーヘロ」という意味です。V. calycinumとV. dentatumは、主要6島すべてに分布します。V. reticulatumは、マウイ島とハワイ島に多く、カウアイ島、オアフ島、モロカイ島ではあまり見られません。 ハワイ島では、オーヘロの実は、火山の女神ペレに捧げられる神聖なものでした。人々は、キーラウエアの近くでオーヘロの実の食べるときには、まずペレが住んでいるとされるハレマウマウ・クレーターにオーヘロの実がついた枝を投げ入れ、 ペレにオーヘロの実を捧げていたそうです。果実はまた、ネーネー(ハワイガン)の好物でもあります。 日本語名:― ハワイ語名:‘ōhelo 英語名:― 学名:Vaccinium calycinum、Vaccinium dentatum、Vaccinium reticulatum 分類:ツツジ科(Ericaceae)スノキ属(Vaccinium) その他:ハワイ固有種(endemic)...

ニシキアナゴの話

今年の夏休みも、家族揃って日本に帰省しました。今年は数年ぶりに名古屋港水族館にお邪魔することができ、子供達も大喜びでした。以前お話ししたことがありますが、長女はチンアナゴが大好きです。水族館でも色々とチンアナゴグッズを購入していました。ところで、チンアナゴは白地に黒い斑点がたくさんありますが、水族館でよくチンアナゴと一緒に展示されている、オレンジと白の縞模様のチンアナゴに似た魚をご存知ですか?今回はこのチンアナゴに似た魚、ニシキアナゴのお話しをさせていただきたいと思います。 ニシキアナゴはチンアナゴと同様、ウナギ目アナゴ科チンアナゴ亜科に属する魚です。体の模様以外はチンアナゴにそっくりで、体長も大きいもので40cmほどになりますが、その体のほとんどは砂の中に隠れていて、頭部と体の前方だけを砂から出しています。 生育しているのはインド太平洋西部の熱帯域で、日本でも沖縄などで見られますが、残念ながらハワイには生息していません。以前チンアナゴは英語でgarden eelと呼ばれると言いましたが、もっと細かく言うと、チンアナゴはspotted garden eel(spottedは斑点のある、の意)、ニシキアナゴはsplendid garden eel (spleendedは華麗な、という意)と呼ばれています。 チンアナゴ同様、ニシキアナゴも流れの比較的速い砂底で流れてくる動物プランクトンを食べています。チンアナゴやニシキアナゴがみんな同じ方向を向いているのは、餌の流れてくる方向に合わせて向きを変えているからなんですね。...

マツリカ(ピーカケ)

マツリカは、ジャスミンの一種で、南アジアと東南アジアが原産の常緑低木です。ハワイでは「ピーカケ(ピカケ)」という名でよく知られています。つぼみをロープ状に繋げたピーカケ・レイには、格別の気品と芳香があります。レイのほかに、香水や茶(ジャスミンティー)の原料にもなります。 花はクリーム色で、大きく分けて一重咲き(single)、二重咲き(semi-double)、八重咲き(doubleまたはrose)の3タイプがあります。しかし、ある本ではsingleとdoubleの2種類とされていたり、また別の本ではsingle、double、roseの3種類だったり、あるいはこれに多数らせん状タイプ(multi-whorled)を加えて4種類としたりと、筆者によってまちまちで、名称や基準は曖昧であるようです。レイに使われるのは、ほとんどが一重咲きのもので、一般的にピーカケといえばこのタイプです。二重咲きは、花弁が細長く、二つの花が一つになって咲いているような形をしています。八重咲きは、多数の先が丸い花弁からなり、その姿がバラの花に似ていることから、ローズ・ピーカケとも呼ばれます。 マツリカは、カイウラニ王女が愛した花として知られています。ピーカケというハワイ語は、クジャクの英語である「peacock」をハワイ語の発音にしたものです。カイウラニ王女が、クジャクと同じようにマツリカも愛したことから、マツリカもピーカケと呼ばれるようになったと言われています。 日本語名:マツリカ(茉莉花) ハワイ語名:pīkake 英語名:Arabian jasmine 学名:Jasminum sambac 分類:モクセイ科(Oleaceae)ソケイ属(Jasminum) その他:外来種(alien)...

アカウミガメの話

前回はタイマイのお話をさせて頂きましたが、日本で一番頻繁に見ることのできるウミガメはアカウミガメではないでしょうか。アカウミガメはハワイでは見ることができませんが、日本にはアカウミガメの産卵地が各地に存在します。そこで今回は、このアカウミガメのお話をさせて頂きたいと思います。 アカウミガメは爬虫綱カメ目ウミガメ科アカウミガメ科に属するウミガメです。甲羅の長さは100cm、体重は重いもので180kgほどにもなり、アオウミガメよりはやや大きくなります。一番の特徴は頭部が大きいことで、英語名Loggerhead turtleのloggerheadとは「大きな頭」という意味です。アオウミガメが海藻や海草、タイマイが海綿を食べるのに対し、アカウミガメは比較的雑食性で、カニなどの甲殻類や貝などを食べます。 日本では和歌山県、日南海岸、屋久島などで数多く産卵されていますが、時々ニュースになる日本国内でのウミガメの産卵は、アカウミガメのものです。近年では産卵場所を確保するなど、保護活動に力を入れている地域も多いようです。 数年前にはアカウミガメが産卵する町が舞台の朝の連続テレビ小説がありましたね。以前、研究の一環で日本人とウミガメの関わりについて調べていた時に、浦島太郎に出てくるウミガメがアカウミガメだということを知りました。以来アカウミガメを見るたびに、「浦島太郎はこのウミガメに乗って竜宮城へ行ったんだな。」なんて考えてしまいます。...

プア・ケニケニ

プア・ケニケニは、南太平洋原産の灌木です。ハワイの花好きな人々のあいだでとても人気があります。花は香りがよく、人気のあるレイになる他、ココナッツオイルの香り付けにも使われます。ハワイでは自生していませんが、民家の庭などによく植えられています。ホノルル(オアフ島)、カフルイ(マウイ島)、ヒロ(ハワイ島)などの住宅地で多くみられます。 10m以上の高木に育つ場合もありますが、ほとんどは3m程度の灌木です。葉は光沢があり、長さは約15cm、幅は約7.5cmです。花は約5cmで、トランペットのような形をしていて、最初はクリーム色ですが時間とともに濃い黄色に変化します。果実は約2.5cmで、オレンジ色もしくは赤色です。果実は鳥たちの好物です。   ハワイ語でプア(pua)は花、ケニケニ(kenikeni)はアメリカ通貨の10セントを意味します。つまり、プア・ケニケニを直訳すると「10セントの花」となります。この名は、昔、この花一輪が10セントで売られていたことに由来するそうです。ポリネシアの伝説では重要な役割を担う木であり、神聖視されています。タヒチでは、プア・ケニケニの材から森の神タネ(Tane)の像が彫られます。 日本語名:― ハワイ語名:pua kenikeni 英語名:― 学名:Fagraea berteriana 分類:リンドウ科(Gentianaceae) 外来種(alien)...

タイマイの話

以前にも何度か、ハワイで最も頻繁に見られるウミガメはアオウミガメだというお話をしましたが、アオウミガメ以外にハワイで見られるウミガメはタイマイで、ハワイ語ではHonu‘eaと呼ばれています。数はとても少ないですが、ハワイ島、マウイ島、モロカイ島、オアフ島の限られた海岸で産卵することが知られています。タイマイは日本でも見ることができ、その甲羅は以前、鼈甲の原料として重用されました。今回は、このタイマイについてお話させていただきたいと思います。 タイマイは、カメ目ウミガメ科タイマイ属に属する爬虫類の一種です。甲羅の長さは1m前後、体重は70kgほどになり、アオウミガメよりはやや小ぶりです。一番の特徴はその尖った嘴(吻端)で、英語名ではHawksbill turtle(鷹の嘴を持つカメ)と呼ばれています。もう一つ面白いのは、タイマイの主食が海綿であることでしょう。その尖った嘴で、サンゴや岩の間に生息する海綿を穿るようにして食べています。実は海綿は毒性があるため、他の動物からは餌としては避けられています。海綿を主食とするタイマイも肉に毒があるため、食用としてはあまり向いていません。 タイマイは乱獲や開発などによる生息地の減少によって生息数が激減し、絶滅危惧種に指定されています。ご存知の方も多いと思いますが、現在ではワシントン条約によってタイマイ(の甲羅)の輸出入が禁止になっています。...

ハワイのトレイルその33~デヴァステーション・トレイル(ハワイ島)

デヴァステーション・トレイル(Devastation Trail)は、ハワイ火山国立公園内にあるビギナー向けのハイキングコースです。Devastation(荒廃)という名の通り、1959年の噴火によるシンダー(cinder、噴石のうち細粒のもの)で埋め尽くされた大地の中を歩くトレイルです。 トレイルの入り口へ車で行く場合、国立公園の入り口を過ぎてすぐ左折し、Crater Rim Driveを進みます。有名なThurston Lava Tubeを過ぎてしばらく進むと、Chain of Craters Roadとの交差点があります。ここを右折するとすぐに広い駐車場があります。すぐ近くに、デヴァステーション・トレイルの入り口を示す看板があります。   1959年の噴火当時は一面が死の世界となりましたが、現在は荒涼とした景色の中にオーヒアやオーヘロなどの植物が戻ってきています。アパパネ(アカハワイミツスイ)やネーネー(ハワイガン)などの野鳥の姿も見られます。トレイルは、終点のプウ・プアイ展望所(P‘uu Pua‘i Overlook)まで舗装されています。プウ・プアイは、1959年の噴火でできた丘です。噴火時には、溶岩がプウ・プアイの5倍の高さにまで吹き上がったそうです。プウ・プアイ展望所からは、キーラウエア・イキ・クレーターを見下ろすことができます。帰りは、来た道を戻ります。 場所:ハワイ火山国立公園(ハワイ島) コース:往復 往復距離:約1.6km 高低差:約13m ——————————————————————— 「画像1」デヴァステーション・トレイル(奥に見える丘がプウ・プアイ) 「画像2」トレイルの入り口 「画像3」オーヒアとアパパネ(アカハワイミツスイ)...

マグロの話

ハワイの人はよくマグロを食べます。スーパーに行けばどこでも当たり前にアヒポケがありますし、お寿司屋さんでもマグロは人気です。先日日本に帰省した際、久しぶりに葛西臨海水族園に行ってきました。展示されていたマグロが大量死したニュースはみなさんご存知だと思いますが、1匹だけ残ったマグロの泳ぐ姿もまた格好良かったです(残念ながら、私が訪れたのはマグロが追加で導入される直前でした)。今回は、このマグロのお話をさせていただきます。 マグロはスズキ目サバ科マグロ属に属する回遊魚です。回遊魚とは、成長段階や環境によって生息する場所を泳いで移動する魚のことです。英語ではTuna(ツナ)と呼ばれますが、実はツナはカツオなどの近縁の魚も含んだ呼び方になります。マグロはかなり大型の魚で、大きな個体では3mを超えるものもあります。マグロの特徴といえば、泳ぎ続けていないと呼吸ができなくて死んでしまうことでしょう。このためマグロは寝ている間も泳ぎ続けています。 マグロの水銀値について聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。私も妊娠中に、妊娠中、授乳中、また小さな子供はマグロの摂取量に気をつけるようにアドバイスされました。生態系の頂点にいるマグロには、生物濃縮によって水銀が体内に溜まってしまうのです。最近の研究でも、ハワイで獲れるマグロの水銀値が年々上昇しているという報告がありました。今の所はまだすぐに健康に害を与えるほどの量ではないそうですが、できれば安心して美味しいマグロを食べたいですね。...

プルメリア

プルメリアは、丈夫で繋ぎやすく香りの良いレイフラワーとして、または見栄えの良い庭木として、ハワイで最も人気のある植物の一つです。ハワイでの人気の高さと数の多さから、ハワイ原産の植物だと思われることが多いのですが、メキシコやグアテマラなどの熱帯アメリカが原産です。生長は遅いとはいえ栽培しやすい木で、折った枝から育てることができます。低地から標高1,000mくらいまでのいたるところに植えられています。 ハワイには1860年に、植物学者ウィリアム・ヒレブランド(William Hillebrand)によって持ち込まれました。ヒレブランドによって植えられたプルメリアの木が、ホノルル市内のフォスター植物園に現存します(画像2)。当時ヒレブランドは、この地で暮らしたのだそうです。 プルメリアには、さまざまな交配種があります。近年はハワイ大学によって交配が行われていて、多くのバリエーションは自然交配から派生したものであるそうです。オアフ島西部にあるココ・クレーター植物園には、プルメリア園があり、さまざまな品種のプルメリアを見ることができます。 日本語名:― ハワイ語名:pua melia 英語名:plumeria 学名:Plumeria L. キョウチクトウ科(Apocynaceae)インドソケイ属(Plumeria) 外来種(alien) ——————————————————————— 「画像1」色とりどりのプルメリアの花たち 「画像2」フォスター植物園に現存する、ヒレブランドによって植えられたプルメリア 「画像3」ココ・クレーター植物園のプルメリア園 「画像4」レイ・レインボー(Lei Rainbow)という品種のプルメリア...

タコクラゲの話

前回は最もポピュラーなクラゲであるミズクラゲのお話をさせて頂きました。ワイキキ水族館には、クラゲの展示をして欲しいという個人からの寄付で、クラゲ展示コーナーが作られています。その中に、8本の長い腕を持ち、丸い傘を頻繁に開閉して泳いでいるクラゲがいます。今回は、このタコクラゲというクラゲについてお話させて頂きたいと思います。 タコクラゲは、刺胞動物門鉢虫綱根口クラゲ目タコクラゲ科に属しています。成体の傘の直径は12cmくらいになります。ミズクラゲと違って、傘の周辺には触手がありませんが、傘の下側中央の口の周りにフリルがたくさん付いたような8本の口腕があり、この口腕の先に長い棒状の器官が付いています。しかし、この棒状の器官は触手ではなく、その役割はよくわかっていません。タコクラゲという名前は、もちろんその8本の長い腕を持つ形態がタコに似ているから付けられたものです。ミクロネシアではタコクラゲは環礁に囲まれた静かな湾内で見られるため、英語ではlagoon jellyと呼ばれています。 タコクラゲが面白いのは、体内にサンゴと同じ褐虫藻という単細胞の海藻が共生していることです。そのため体の色がちょっと茶色っぽくなっています。タコクラゲ自身も微小なプランクトンを捕食しますが、褐虫藻からもその光合成産物を栄養として受け取っています。そのため、中には日光がよりあたる所を求めて動くものもいるようです。タコクラゲもミズクラゲと同様、刺されてもあまり痛くありませんので、海中で遭遇してもあまり怖がらなくても大丈夫ですよ。...