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イエスズメ(家雀)

日本のスズメ(Passer montanus)よりやや大きい、ユーラシア原産のスズメです。ハワイの町中で普通に見られます。農地でも見られますが、森林にはほとんど生息していません。日本のスズメと同じように、人間の生活に密着しているので、ハワイでも人々によく認知されている鳥です。ハワイには1871年にニュージーランドから移入されました。 ハワイの主要6島すべてに生息します。ハワイの他にもユーラシア、オーストラリア、南北アメリカなど、世界的に分布しますが、ユーラシア以外は人為的に移入され定着したものです。現在も分布地域を拡大し続けています。「画像3」 全長約15cm、雌雄異色。雄は上面が茶色、下面が灰色で、頭頂は灰色、胸の上部は黒色、頬は白色です。雌と未成鳥は上面が鈍い茶色、下面が灰色です。ハワイのイエスズメは、大陸で見られるものとくらべて、体の色がやや淡く、足の色もやや明るいと言われています。さえずりはバラエティに富んでいます。地鳴きは「チュン、チュン」。食べられるものは何でも食べます。人間の食べ残しを狙って、フードコートやレストランのテラス席などにもやってきます。 日本語名:イエスズメ(家雀) ハワイ語名:― 英語名:House Sparrow 学名:Passer domesticus 分類:スズメ科(Passeridae) その他:外来種(alien)  ...

外来種の海藻の話

つい先日の事。家に届いた朝刊の一面を飾ったのが、私が所属する研究室の教授でした。記事はワイキキで問題となっている外来種の海藻と、それらを除去するクリーンアップのイベントについてでした。そこで今回は、ハワイで問題となっている外来種の海藻のお話をさせて頂きます。 1950年から、ハワイの海には約20種類の外来種の海藻が入って来ました。ちなみに外来種とは、人為的に外からその土地に入って来た生き物の事です。ハワイに入って来た外来種の海藻のうち、元々ハワイに生息していた海藻を脅かすような大きな影響を与える侵略的外来種は5種類です。この5種類の中で、現在ワイキキで問題になっているのが3種あります。このうち以前から問題になっていたのがゴリラ・オゴ(学名:Gracilaria salicornia)とトゲノリ(学名:Acanthophora spicifera)ですが、ここ数年で今まではワイキキにいなかったLeather mudweed(日本名無し、学名:Avrainvillea amadelpha)がかなり広がりをみせています。 これらの侵略的外来種の海藻は非常に繁殖力が強く、在来種の海藻や産後の生息を脅かしています。私達の研究室では長年にわたってこれらの外来種の海藻に着いて研究・調査してきました。また、ワイキキのホテルやワイキキ水族館、地元の小学校や高校と協力して外来種の海藻の除去を行ったりしています。現在、海藻除去のイベントは、不定期にワイキキ水族館前のビーチで行われています。...

インドクジャク(ピーカケ)

インドの国鳥であるインドクジャクは、ハワイには1860年頃移入されました。現在はカウアイ島、オアフ島、マウイ島、ハワイ島に生息しています。牧草地や農地近くの山林などにいますが、警戒心が強く、なかなか近くで観察することができません。インドクジャクは、ハワイではクジャクの英語であるピーコック(peacock)を、ハワイ語の発音にして「ピーカケ」とも呼ばれています。 全長は雄が約180~230cm、雌が約90~100cm。雄は体が緑と青で、長い尾羽を持ちます。雌は上面が褐色で、下面は淡色です。大きな声で「ミャーオウ」と繰り返し鳴きます。雄一羽と数羽の雌からなる群れを作ります。夜は木の上で休みます。体も尾羽も真っ白な白化個体もたまに見られます。 ハワイ王朝時代には、王族達のペットとして飼われていたそうです。『Princess of the Peacocks(クジャクの王女)』という愛称もあるカイウラニ王女(1875-1899)が愛した鳥として知られています。カイウラニは、アーイナハウという、当時ワイキキにあった王族の地所で暮らしていました。その庭には、インドクジャクがたくさん放し飼いにされていて、王女が手渡しでえさを与えていたそうです。 日本語名:インドクジャク(印度孔雀) ハワイ語名:Pikake 英語名:Common Peafowl、Indian Peafowl 学名:Serinus mozambicus 分類:キジ科(Phasianidae) その他:外来種(alien)  ...

タコの話

この前ワイキキのとあるビーチで海藻を取っていると、海藻にまぎれて動く物体を発見。よく見ると、それはタコでした。海の中でタコを発見したのは初めてだったので、追いかけてじっくりと観察してしまいました。ハワイでもタコはポキなどで食用としてもお馴染みで、ハワイの人には日本語で「タコ」と言っても通じます。そこで今回は、このタコについてお話したいと思います。 タコは前回お話ししたオウムガイと同じ、頭足類の軟体動物の仲間です。無脊椎動物の中でも最も高度な知能を持つと言われていて、視力が発達し、色や形を識別することができます。また、カメレオンのように、自分の周りの色に合わせて体の色を変えることができます。そのため、たまに水族館でも周りと同化していてすぐに見付けられない事があります。私が海の中で見つけた時も、見事に周りの海藻に溶け込んでいました。タコの頭に見える部分は実は胴体で、頭はその胴体の下部、8本の腕の付け根部分にあります。これはイカも同様で、つまりは頭から足が生えているということですね。そのためタコやイカは「頭足類」と呼ばれているのです。 タコやイカは敵から逃げる際に黒いスミを吐きますよね。私はたまに無性にイカスミのパスタが食べたくなります。が、噂によるとどうやらタコのスミの方がおいしいらしいのです。しかし、タコのスミはイカスミよりも加工がしにくく料理には向いていないのだとか。どうりでタコスミのパスタがない訳ですね。...

ショウジョウコウカンチョウ ショウジョウコウカンチョウは、アメリカ本土が原産の鳥です。ハワイには1929年にアメリカ東部より移入されました。現在はハワイの主要な島々すべてに生息します。標高の低い林などにいるほか、町中でも見られます。餌台にも集まります。 全長約22cm、雌雄異色。雌雄とも冠羽があります。雄は体が朱色で、嘴の周りが黒色です。雌は体が茶色で羽、尾、冠羽が赤みを帯びています。雄は澄んだ声で大きくさえずります。朝や夕方に、電線などに止まってさえずる雄の姿が、ホノルルの住宅地でも見られます。地鳴きは、音程の高い「チッ、チッ」です。 アメリカ本土の多くの人々とっては見慣れた鳥なので、本土からの観光客がハワイにショウジョウコウカンチョウがいることに驚くことも多いようです。メジャー・リーグ・ベースボール(MLB)のセントルイス・カージナルスや、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のアリゾナ・カージナルスのチーム名にある「カージナル」は、ショウジョウコウカンチョウのことです。それぞれのチームのロゴデザインにも、ショウジョウコウカンチョウが使われています。 日本語名:ショウジョウコウカンチョウ(猩々紅冠鳥) ハワイ語名:― 英語名:Northern Cardinal 学名:Cardinalis cardinalis 分類:ショウジョウコウカンチョウ科(Cardinalidae) その他:外来種(alien)...

オウムガイの話

前回はワイキキ水族館のお話をさせて頂きましたが、ワイキキ水族館の中でひと際暗くて目立たないのがオウムガイの水槽です。一見地味なために子供達には無視されがちですが、実はワイキキ水族館では繁殖の研究も行われていて、私にとってはこの水族館の中で最も興味のある一押しの水槽だったりします。そこで今回は、このオウムガイについてお話したいと思います。 オウムガイは名前に「カイ(貝)」と付いてはいますが、同じ軟体動物でもどちらかというと貝よりはタコやイカに近い頭足類の仲間です。オウムガイの殻は巻貝のようにも見えますが、内部は普通の巻貝と違い、アンモナイトのように幾つもの部屋に仕切られています。体が収まっているのは一番入口に近い部屋で、その奥の部屋達に入っているガスで浮力を調節しています。生まれた時には部屋は4つしかないのですが、大人になると30部屋にもなるそうです。殻の入口からはたくさんの触手が覗いていますが、この触手はなんと90本にもなります。確かにこの触手だけに注目すると、何気にグロテスク。しかしこの触手達には味覚器が付いていて、ここで餌の場所や種類を認識しています。触手の後ろには大きな目がありますが、この目にはレンズがなく視力はあまり良くありません。 オウムガイは「生きた化石」と言われていますが、それは約5億年前に誕生して以来ほとんど変化していないからです。現在は西太平洋にしか生存していませんが、5億年前にはオウムガイの仲間が世界の海を席巻していたそうです。見れば見るほど不思議なオウムガイ、ワイキキ水族館では絶対に見逃せない水槽です。...

キマユカナリア

キマユカナリアは、アフリカ原産のフィンチです。ペットとして世界的に有名なカナリアとは別種です。ハワイには1960年代に移入されました。当時の飼育者によってこっそりと放された籠鳥が野生化したのが始まりのようです。現在はオアフ島、モロカイ島、ハワイ島に生息します。 全長約11cm、雌雄異色。雄の上面は緑味を帯びた灰色、下面は黄色です。頭頂と後頭部は灰色です。目を挟んだ上下に黄色い縞模様があり、正面から見ると黒色の『X』に見えます。雌と未成鳥は、体の色が雄ほど鮮やかではありません。 乾燥した、開けた広場や林などを好む鳥です。小さな群れを作って地面上や木の上で種子や虫を食べる姿が見られます。特にリーワード(貿易風の風下側)に多いようです。ホノルルでは、カピオラニ公園のアイアンウッドの木などで簡単に見つけられます。住宅街でもたまに見られます。ハワイ島では標高2,000mを越える地域にも生息します。オーヒアの森やマーマネの森などの在来植物の森でも見られ、乾燥した森にも湿潤な森にも生息します。 日本語名:キマユカナリア ハワイ語名:― 英語名:Yellow-fronted Canary 学名:Serinus mozambicus 分類:アトリ科(Fringillidae) その他:外来種(alien) ——————————————————————— 「画像1」キマユカナリア 「画像2」キマユカナリア 「画像3」キマユカナリア...

ワイキキ水族館

先日、久しぶりにワイキキ水族館に行ってきました。カラカウア通りをダイアモンドヘッド方面にしばらく歩いたところにありますが、トロリーなども停まるので観光客の方にも人気の場所です。この水族館、実はハワイ大学の付属施設なので、私は大学関連のパーティーや教育イベントなどで度々訪れます。そこで今回は、このワイキキ水族館のお話をさせて頂きます。 先述の通り、ワイキキ水族館はハワイ大学の施設なので、よく学生がバイトとして働いていたり、課外授業が行われたり、学生の研究の場となったりもします。私の友人も何人もここでバイトしていました。水族館としては小規模で、あっという間に全ての展示を見終わってしまいますが、その分隅々まで手入れが行き届いています。ボランティアで働いている方々も多く、屋外のタッチプールでは、彼らが色々説明してくれたり、ウニやヤドカリを触らせてくれたりします。 この水族館の目玉は、やはり絶滅危惧種のハワイアンモンクシールでしょう。屋外の水槽で2匹のモンクシールを身近に観察する事ができます。最近始まったアオウミガメの展示も見逃せません。ちなみにこのアオウミガメたちは、シーライフパークで産まれてワイキキ水族館に貸し出されているものです。水族館の入り口では日本語音声ガイドも無料で貸し出しているので、是非それを片手にゆっくりと館内をまわって見て下さい。...

ブンチョウ

ブンチョウは、英語名のJava Sparrow(ジャワ島のスズメ)が示す通り、インドネシアが原産の小鳥です。ハワイには1867年に持ち込まれたのが最初で、その後1960年代に再び移入されました。オアフ島の開けた場所では多く生息し、数を増やし続けています。近年はカウアイ島(プリンスビル)、マウイ島、ハワイ島(コナ、ヒロ)などでも定着しています。ハワイの他にもフィジー、アメリカ本土、アフリカ、中国、日本などに人為分布しています。 全長約15cm、雌雄同色。体は灰色、頭と尾は黒色、頬は白色、太い嘴と囲眼輪は明るいピンク色。地面で群れて草の種や虫を食べている姿が見られるほか、餌台にもよく集まります。餌台には20羽以上が集まることも珍しくありません。巣は、木の空洞部や、ビルの軒裏などに作ります。 飼い鳥として世界的に知られているブンチョウですが、原産地のインドネシアでは、ペットとしての大量捕獲が原因で数が減ってしまい、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは絶滅危惧II類に指定されています。 日本語名:ブンチョウ(文鳥) ハワイ語名:― 英語名:Java Sparrow 学名:Padda oryzivora 分類:カエデチョウ科(Estrildidae) その他:外来種(alien) ——————————————————————— 「画像1」ブンチョウ 「画像2」ブンチョウ 「画像3」ブンチョウ...

セイウチの話

昨日、家で海の生き物の写真を見ていたら、横で一緒に見ていた旦那がとある生き物の写真のところですごく驚いていました。「何、このでっかいアザラシ!」しかしよく見ると、それはセイウチの写真でした。どうやらセイウチという生き物の事は全く知らなかったそうです。まあ、ハワイには水族館にもいないので、しょうがないと言えばしょうがないのですが・・・。そこで今回は、このセイウチのお話をさせて頂きたいと思います。 セイウチといえば、やはりその巨体が特徴ですが、体長は3mほど、体重は重たいもので1トン以上にもなるそうです。地上では1トンの体を前ヒレだけ使って動くわけですから、それは見た目にも大変そうなわけですね。北極海沿岸に生息しているので、体が厚い皮下脂肪でおおわれています。しかし体表には毛が生えておらず、皮膚はごつごつしています。 セイウチのもう一つの特徴は大きな牙ですね。この牙は上あごの犬歯が大きくなったものですが、雄雌両方に生えます。オスのほうが牙は長くなるようで、1mくらいになることも。オスは勢力争い(セイウチはハーレムを作ります)にこの牙を使いますが、その他にも牙を使って水中から陸上に上がったり、エサを探すのに海底を掘ったりと、この牙は実に多機能なのです。口の周りには牙のほかにもたくさんのヒゲが生えています。このヒゲは海底でエサを探すのに役立ちます。その巨体と長い牙にミスマッチなつぶらな目とモジャモジャのヒゲにとても魅力を感じるのでした。...