ハワイからのコンテンツ: 海の中を覗いてみれば

オオグソクムシの話

ダンゴムシといえば、触ると体をくるっと丸めるお馴染みの虫ですが、実はハワイには生息していません。なので、我が家の長女は日本に遊びに行くと、ダンゴムシを見つけては捕まえて喜んでいます。このダンゴムシ(もしくはワラジムシ)に似た虫が海の中にもいるのですが、ダンゴムシとひとつ違うのはとても大きいこと。今日はこの、海の中の大きなダンゴムシ、オオグソクムシについてお話しさせていただきます。 オオグソクムシは、節足動物門甲殻亜門等脚目スナホリムシ科に属する生き物で、ダンゴムシやフナムシの仲間です。等脚目の仲間では日本では最大で、体長が15cmほどにもなります。ダンゴムシが大体1-1.5cmですから、相当大きいですね。最近はその見た目から人気上昇中らしく、水族館でもよく展示されているようです。オオグソクムシは水深150-600mの深海に住んでいて、海底の死んだ魚や小動物を主食としていると言われています。海に住んでいるので泳げるらしく、泳ぐ時は仰向けで泳ぐそうです。 オオグソクムシの一番面白いところは、口から臭い液を出して身を守るということ。人間でも口臭のひどい人には誰もが近寄りたくないと思いますが、身を守れるほど臭いって、オオグソクムシの口臭はどれだけ臭いんでしょうか?しかも水中なのに。怖いもの見たさでちょっと嗅いでみたいような、みたくないような…。...

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ウミガメの日光浴の話

ノースショアのハレイワの先にあるラニアケアビーチ(Laniakea Beach)はウミガメのビーチとして有名で、ご存知の方も多いのではないでしょうか?このビーチにはたくさんのアオウミガメが住んでいて、毎日のように砂浜に上がって日光浴(甲羅干し)をしている姿が見られます。今回は、このウミガメの日光浴についてお話ししたいと思います。 ラニアケアビーチには、日中ボランティアが常駐していて、日光浴をしているウミガメに近付き過ぎないように注意を促したり、見物客の質問に答えたりしています。私も10年近く前、このボランティアが今の体勢になる以前に、ラニアケアでボランティアをしていました。ボランティアの人々は、研究者のためのデータも取っていて、どのウミガメがどのくらい日光浴をしていたかなどを記録しています。このデータによると、ウミガメは海水温が低い時の方が日光浴をすることがわかりました。ウミガメの日光浴は体温調節のためというのが一般的な説ですが、免疫力強化や消化を助ける働きもあるのでは、とも言われています。 地球温暖化による海水温の上昇がこのまま続くと、ハワイのウミガメは早ければ2039年までに日光浴をしなくなるかもしれない、と研究者は言っています。また、全世界では2100頃までにウミガメの日光浴は見られなくなるだろう、とのことです。地球温暖化は色々な野生動物の生態に影響を及ぼしているのですね。...

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サンゴの白化現象の話

2014年の後半、ハワイでは深刻なサンゴの白化現象が観測されていました。白化現象はカウアイ島からハワイ島まで、浅瀬の海で観測されましたが、特にひどかったのはオアフ島のウインドワードサイド(風上側)、カネオヘ湾で、80%のサンゴが白化したと報告されています。今回は、このサンゴの白化現象についてお話ししたいと思います。 以前サンゴの話のところでもお話ししましたが、サンゴの体内には褐虫藻という単細胞の藻類が共生しています。サンゴの綺麗な色はこの褐虫藻によるものです。また、褐虫藻が日中光合成をして、できた養分をサンゴに提供しています。サンゴの白化現象とは、何らかのストレスによって、この褐虫藻がサンゴの体外に放出されることで起こります。白化を引き起こすストレスの第一には、海水温の上昇が挙げられます。褐虫藻が放出されてもしばらくサンゴは生きていますが、白化が長引くと死んでしまいます。 今回のハワイのサンゴの白化は観測史上最悪と言われていますが、やはり海水温が例年になく高温だったことが原因です。幸運にも、白化したサンゴのほとんどは回復しました。しかし、今年の後半はまた、エルニーニョのためにハワイの海水温が上昇することが予測されていて、次の白化にサンゴが果たして耐えられるのか、専門家たちは危惧しています。さらに最近、別のサンゴの病気が観察されていて、ハワイのサンゴにとっては受難の時期が続いています。...

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セイウチの話

先日、PCに保存されている海の生き物の写真を整理していたら、横で一緒に見ていた家族がとある生き物の写真のところですごく驚いていました。「何、このでっかいアザラシ!」しかし、それはアザラシではなくセイウチの写真でした。どうやらセイウチという生き物の事は全く知らなかったようです。まあ、ハワイにはワイキキ水族館にもシーライフパークにもいないので、見たことがないからしょうがないと言えばしょうがないのですが・・・。そこで今回は、このセイウチのお話をさせて頂きたいと思います。 セイウチといえば、やはりその巨体が特徴ですが、体長は3mほど、体重は重たいもので1トン以上にもなるそうです。地上では1トンの体を前ヒレだけ使って動くわけですから、それは見た目にも大変そうなわけですね。北極海沿岸に生息しているので、体が厚い皮下脂肪でおおわれています。しかし体表には毛が生えておらず、皮膚はごつごつしています。 セイウチのもう一つの特徴は大きな牙でしょう。この牙は、上あごの犬歯が大きくなったものですが、雄雌両方に生えます。オスのほうが牙は長くなり、1mくらいになることも。オスは勢力争い(セイウチはハーレムを作ります)にこの牙を使いますが、その他にも牙を使って水中から陸上に上がったり、エサを探すのに海底を掘ったりと、この牙は実に多機能なのです。口の周りには牙のほかにもたくさんのヒゲが生えています。このヒゲは海底でエサを探すのに役立ちます。その巨体と長い牙にミスマッチな、つぶらな目とモジャモジャのヒゲが、とってもキュートですよね。...

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ベニーというハワイアンモンクシールの話

先日の新聞に、釣り針が刺さった状態で発見されたハワイアンモンクシールが、獣医による手術後に回復して海に返されたことが記事になっていました。以前にも書かせていただきましたが、モンクシールは絶滅危惧種で保護されているため、こういうことがあると大きく報道されます(この記事も一面に載っていました)。今回は、このモンクシールのニュースについてお話しさせて頂きたいと思います。 ベニーというオスの12歳のモンクシールは、昨年の年末に口から釣り糸が出てきている状態で発見され、アメリカ海洋大気庁(National Oceanic Atmospheric Administration、略してNOAA:ノアと呼ばれます)の職員に保護されました。NOAAには海洋生物の保護を主な業務とする部署があり、モンクシールやウミガメの保護はこの部署が担当しています。レントゲンの結果、ベニーの胃には10 cmほどの釣り針が刺さり、針に付いていたワイヤーリーダーが食道を通って口から出てきていることがわかり、手術で取り除かれることになりました。手術は無事成功し、2週間ほどのリハビリ期間を経て、元気になったベニーがこの日、NOAAの職員らに見送られて海に返されたのです。 現在、ハワイアンモンクシールは1,100頭弱しかおらず、ハワイ主要8島にはそのうちの150頭が生息していると言われています。昨年はベニーのようなモンクシールの釣り針の事故が12件ほど報告されています。NOAAは、もし釣りをしていてモンクシールに針がかかってしまったら、すぐに報告して欲しいと呼びかけています。hahaNOAAharinituiteitawaiya-ri-da-ga hawaiannmonnkushi-ru...

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テングハギの話

ハワイの海に潜ると、鼻先に角(ツノ)のようなものが生えた魚がいます。ワイキキ水族館でもよく見かけるこの魚は、その角から英語ではユニコーンフィッシュ(Bluespine Unicornfish)と呼ばれているのですが、日本語ではテングハギと呼ばれているそうです。日本では角が天狗の鼻に例えられているのですね。今日はこのテングハギのお話をさせていただきたいと思います。 テングハギは、スズキ目ニザダイ科テングハギ属に属する魚で、太平洋?インド洋に生息しています。ハワイ語でも名前があり、カラ(kala)と呼ばれています。海藻を主食とする魚で、体の色は黒褐色から灰色、成長すると50?60cmほどになります。テングハギ属に属する魚はテングハギの他に20種類ほどが確認されていて、その多くに角が生えています。テングハギの角はオスにもメスにも生えていますが、オスの方が大きい傾向があるようです。この角は個体間の競争や闘争の武器として使われそうですが、実はその目的には使われていません。テングハギが喧嘩をするときは、尾びれの付け根部分にある棘を使います。 テングハギは食用としてもなかなか美味しいそうです。刺身が特に美味しいとのことで、私はまだ食べたことがないですが、チャンスがあれば是非一度食べてみたいと思います。...

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オーナメンティッド・ラスの話

ワイキキ水族館に、とても綺麗な配色をしたベラがいます。複雑な模様なので言葉で表現するのは難しいですが、ピンクっぽい頭には緑の横筋が入り、腹部はブルー、体側は三日月型をした赤と緑の点が交互に並び、尾ひれは赤に緑の斑点。今日はこの、水槽でとても目を引くオーナメンティッド・ラスと呼ばれる魚の話をさせて頂きます。 オーナメンティッド・ラスはスズキ目ベラ科に属する魚で、オーネート・ラス(wrass=ラスはベラ類の魚のこと)とも呼ばれます。オーナメント(ornament)は装飾のこと、オーネート(ornate)は彫刻を施したような、といった意味なので、いずれもその綺麗な体色から名付けられたものと思われます。ハワイ語ではオフア(’ohua)と呼ばれています。日本に生息するツキベラに近い魚で、体の模様もよく似ています。オーナメンティッド・ラスは最後賞に生息する無脊椎動物を主食としますが、餌を取るために口の中には犬歯が隠されています。   ベラの仲間は性転換をすることがよく知られています。一般的に小さめで模様がそんなにはっきりしていない個体はメスで、成長して体が大きくなるとオスになり、体の模様もよりはっきりとカラフルになっていきます。ワイキキ水族館のオーナメンティッド・ラスも、写真のように綺麗な模様の魚はオスだと思われます。...

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モイの話

ワイキキ水族館の屋外に、丸い水槽があります。数年前まではここでマヒマヒ(シイラ)が回遊していたのですが、現在はモイという魚が展示されています。モイはたまにスーパーの魚売り場で売られていますし、和食レストランで焼き魚としてメニューに載っていることもあり、美味しい魚として知られています。今回はこの、モイのお話をさせていただきたいと思います。             モイ(Moi)というのはハワイ語で、英語名は”Six-fingered threadfin”(直訳すると6本の指上の細長いヒレ)、日本名は「セイヨウアゴナシ」といい、スズキ目ツバメコノシロ科に属しています。日本名に「アゴナシ」と付いているように、下顎が短いのが特徴です。また、英語名のように、胸鰭から6本の長い糸状の物が出ています。尾鰭は上下二股に分かれています。銀色の体で、成長すると約45cmになります。昔のハワイではモイはとても珍重された魚で、養魚池(フィッシュポンド)で養殖され、王族しか食べることができませんでした。最近はまたフィッシュポンドで養殖されているようで、現在は誰でも食べることができます。 ところで、数年前の話ですが、ワイキキ水族館のモイが一晩で15匹も盗まれたことがありました。美味しい魚なので、盗んでまでも食べたかったのでしょうか?しかし、一匹何十万もするわけではないし、色々な意味で普通に買ったほうが安かったんじゃないかな、と思いました。...

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マニニの話

He Aloha No ‘O Honoluluというハワイアンソングがありますが、この歌の中に、マニニという魚が登場するのですが、皆さんはマニニがどんな魚かご存じでしょうか?マニニはハワイの海でよく見られる小型の魚です。今回は、このマニニについてお話ししたいと思います。 マニニというのはハワイ語で、日本語ではシマハギ、英語ではConvict tangもしくはConvict surgeonfishと呼ばれる魚で、スズキ目ニザダイ亜目ニザダイ科に属しています。たいちょうは20cmほどで、一番の特徴はその楕円形でクリーム色っぽいの体に縦に走る5、6本の黒い縞模様です。英語名の“convict”とは囚人のことで、白と黒の縞模様が囚人服のように見えるから、その名が付けられたと言われています。熱帯の珊瑚礁の比較的浅い海に生息し、主に岩の表面やサンゴの隙間などに生えている小さい海藻を餌としています。 ニザダイの仲間は尾に刃のようなトゲを持っていて、それは競争や防御のために使われています。もちろんマニニにもこのトゲはありますが、あまり発達していません。マニニは、大きな群れを作ることと、その体の模様によって、捕食者からの攻撃を防いでいると言われています。マニニのような海藻を主食とする魚は、サンゴより成長の速い海藻が珊瑚礁にはびこるのをふせぐ、大切な役割をしています。ワイキキ水族館にもたくさんいますので、ぜひどんな魚か見てみてください。...

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マッシュルームコーラルの話

ワイキキ水族館に行くといくつかの水槽で、平たい楕円形で細かいヒダのある、緑や紫、茶色をした石のような物体を見かけます。実はこれは歴とした生き物で、英語ではマッシュルームコーラル(科学名のFungiaも、英語でキノコを含む菌類を表すfungiに由来すると思われます)、日本語ではクサビライシと呼ばれています。今回は、このマッスルームコーラルのお話をさせて頂きたいと思います。 マッシュルームコーラルは、“コーラル”と付く通りサンゴの仲間で、刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱イシサンゴ目クサビライシ科に属しています。放射状の細かいヒダが、キノコのかさの裏側に似ていることから名が付いたようです。ちなみに、日本語の「クサビラ」もキノコの意味です。大きいものでは25cmほどに成長しますが、他のサンゴに比べるとやや成長が遅いそうです。基本的にサンゴは成長が遅いのですから、25cmになるのにはどのくらいかかるのでしょう?体の色は、以前サンゴのところでもお話ししたように、共生している褐虫藻によるものです。 マッシュルームコーラルが他のサンゴと違うのは、岩などに固着せずに、単体で自由生活をしているところです。若いうちは岩に付着しているのですが、成長すると岩から遊離して単体生活を始めるのです。水族館でも、砂の上に無造作にポン、と置かれている感じで、とても面白いサンゴです。...