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リーフィーシードラゴンの話

前回はジャイアント・ケルプのお話しをさせて頂きましたが、海藻の写真を見ていたら、リーフィーシードラゴンのことを思い出しました。これまでもリーフィーシードラゴンの仲間のタツノオトシゴやウィーディーシードラゴンのお話しはさせて頂きましたが、実は一番好きなリーフィーシードラゴンについてはお話ししたことがありませんでした。そこで今回は、このリーフィーシードラゴンのお話しです。 リーフィーシードラゴンはタツノオトシゴやウィーディーシードラゴンと同じ、トゲウオ目ヨウジウオ科に属する魚です。残念ながらハワイには生息しておらず、オーストラリアの南西部にのみ生息しています。体長は大きいもので40cmほどになり、細長い口で大型の動物プランクトンなどをストローのように吸って捕食しています。オスがお腹の中(育児嚢)でメスの産んだ卵を育てるのも、タツノオトシゴやウィーディーシードラゴンと一緒です。 リーフィーシードラゴンの一番の特徴は、やはり海藻に擬態したその外見でしょう。ウィーディーシードラゴンよりもさらに多くの海藻のような付属器官(皮弁)がたくさん付いています。この皮弁により、褐藻類に非常によく似た姿にカモフラージュしているのです。水の中を海藻のようにひらひらとゆっくり泳いでいる姿は優雅で、何時間でも見ていられるような気がします。...

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アキアポーラーアウ(カワリカマハシハワイミツスイ)

アキアポーラーアウは、ハワイミツスイの一種です。ハワイ島の標高約1,400m以上のコアとオーヒアの森に生息します。生息数は少なく、他の多くのハワイミツスイ類同様、絶滅の危機に瀕しています。Hawaii Audubon Societyの『Hawaii’s Birds』第6版(2005年)によると、本種の生息数は、約1,500羽です。アキアポーラーアウという名前は長くて言いにくいため、地元では、「アキ」(「ア」にアクセント)という愛称で呼ばれることもあります。 全長14cmくらいで、雌の方がやや小型です。雄は上面が黄緑色で下面と頭が黄色です。雌と未成鳥は、上面が鈍い黄緑色で下面が灰色味を帯びた緑色です。雄の眼先は黒色で、雌は灰色です。雌雄ともに尾は短く、嘴と足は黒色です。最大の特徴である上嘴は細長く、下にカーブしています。下嘴は真っすぐで、上嘴の約半分の長さです。   木(主にコアの木)の幹と枝の中にいる虫の幼虫を丹念に探します。幼虫を見つけると、頑丈な下嘴でキツツキのように木に穴をあけて、長くカーブした上嘴で幼虫を引き出して食べます。家族単位で移動しますが、他種と混群をつくることもあります。さえずりはメロディアスで、体の大きさのわりには音量があります。地鳴きは、音程が上がるスラーの「チュウィー」と、3~4音からなる「ピユゥウィー」の2種類があり、前者の方が多いようです。 日本語名:カワリカマハシハワイミツスイ ハワイ語名:‘Akiapōlā‘au 英語名:― 学名:Hemignathus wilsoni 分類:アトリ科(Fringillidae) その他:ハワイ島固有種(endemic)、絶滅危惧種(endangered)...

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ジャイアント・ケルプの話

先日、ハワイ大学で海藻のレクチャーをしました。一口に海藻と言っても、植物プランクトンからジャイアント・ケルプと呼ばれる全長50mにも達するものまで様々です。ハワイにはジャイアント・ケルプは存在しないのですが、授業にも度々出てきますし、以前から個人的には非常に興味のある海藻です。そこで今回は、このジャイアント・ケルプについてお話しさせて頂きたいと思います。 ジャイアント・ケルプは褐藻綱コンブ目コンブ科に属する海藻です。ジャイアント・ケルプ(Giant Kelp)というのは英語の一般名で、日本語ではオオウキモとも呼ばれています。最大の特徴はやはりその大きさで、海藻の中では世界最大になります。成長が早いことで知られていて、1日に50cm成長するとも言われています。1日ビデオを回してその成長を早回しで見てみたいですね。茎状部には浮き袋が付いていて、それによって海底から海面に向かって伸びていくことができます。 ジャイアント・ケルプは主に北太平洋の寒い海に生息していて、密集して生えているケルプの森は他の生物たちの重要な生息場となっています。よく、ラッコが海藻を体に巻きつけている画像がありますが、あの巻きついている海藻がジャイアント・ケルプです。ラッコは寝ている間に潮に流されないように、ジャイアント・ケルプを巻きつけているそうです。...

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ティアレ(タヒチアン・ガーデニア)

ティアレは、南太平洋原産の常緑低木です。ハワイで栽培されている外来種の中では、原産地にポリネシアが含まれる数少ない植物の一つです。フランス領ポリネシアの国花で、特にタヒチでは、島のシンボルともいえる代表的な花です。ハワイでは民家の庭などに好んで植えられますが、野生化はしていません。 高さ4mくらいまで生長します。水気の多い低地ではよく育ちますが、高地ではあまり育ちません。葉は対生で、長さ5~16cm。葉の表は光沢がある濃い緑色、裏側は淡い緑色です。花はクリーム色で直径約5cm。5~9枚の花弁があり、花全体は風車のような形をしています。 花は見た目が美しく香りも良いため、ハワイを含めた広い地域で女性の髪飾りなどに使われます。また、ティアレの花弁をココナッツオイルに漬けたものは、モノイ(monoi。古いタヒチの言葉で「香るオイル」という意味。)と呼ばれ、タヒチをはじめとするフランス領ポリネシアでは、女性の髪や肌の手入れに毎日使われる伝統的なオイルです。現在では商業的にも生産されていて、欧米でも人気のあるコスメ用品です。 日本語名:― ハワイ語名:― 英語名:Tahitian gardenia 学名:Gardenia taitensis 分類:アカネ科(Rubiaceae)クチナシ属(Gardenia) その他:外来種(alien)...

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クロガオシャコ

クロガオシャコは、アフリカ原産のシャコです。ハワイには1957年に移入されました。原産地であるエチオピアやエリトリアでは、森の減少が原因で生息数は減りつつありますが、ハワイでは外来種として定着しています。     ハワイではマウイ島以外の主要な島々に分布します。カウアイ島とハワイ島で特に多く見られます。多くは標高約300m以上の乾燥した高地に生息しますが、それより低い湿潤な森でも見られます。峡谷の多い草地や低木林を好みます。早朝と夕方は道路に出てきて歩き回る姿もよく見られます。特に雨の日に人が目にすることが多いようです。     全長41cm。雌雄同色。体は斑模様のある茶色で、頭は栗色、喉は白色です。目の上に黒い線があります。「クワッ、クワッ、クワッ、クワッ」と鳴きます。鳴き声は、まるで人が高笑いしているように聞こえるため、ハワイでは「Laughing Bird(笑い鳥)」と呼ぶ人もいます。カウアイ島のワイメア渓谷などでは、本種の鳴き声がエコーして静かな渓谷に響き渡ります。     日本語名:クロガオシャコ ハワイ語名:― 英語名:Erckel’s Francolin 学名:Francolinus erckelii 分類:キジ科(Phasianidae) その他:外来種(alien)  ...

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クエの話

以前、タマカイ(ジャイアントグルーパー)のお話をしましたが、このタマカイに似た大型魚にクエがいます。クエは日本では高級食材として有名で、私も一度食べてみたいと思っていますが、ハワイには分布していないので、食用として見かけることもありません。今年の夏に名古屋港水族館でクエを見ることができ、すごく嬉しかったです。そこで今回は、クエのお話をさせて頂きたいと思います。     クエはタマカイと同じ、スズキ目ハタ科マハタ属に属する魚です。体長は60-100cmで、日本にいるハタの仲間ではタマカイの次に大きいとされる魚の一つです。南日本から東シナ海、フィリピン沿岸の比較的浅い岩礁やサンゴ礁に生息しています。クエを漢字で書くと九絵、英語名ではLongtooth grouperと呼ばれます。大きな口で魚やイカなどを丸飲みにして捕食します。     クエは九州ではアラとも呼ばれますが、同じスズキ目ハタ科アラ属に属するアラとは別です。クエは鍋料理として食されることが多く、九州ではアラ鍋といえばクエの鍋ですが、関東でアラ鍋というと、アラ属のアラの鍋のことを指すようです。そういえば、クエが高価なため、アブラボウズという別の魚での偽装事件なんていうのもあるようですね。アブラボウズも食べ過ぎなければ美味しいそう(油分が多いので食べ過ぎると消化できない)ですが、できれば本物のクエ鍋をいただいてみたいですね。...

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カロ(タロイモ)

カロ(タロイモ)は、古代ポリネシア人にとって最も大切だった作物です。ハワイの伝説の中でも重要な位置を占めていて、神聖な植物とされてきました。根茎や葉が食用になり、熱帯地域で広く栽培されています。原産地はインドだと考えられています。ハワイでは主要6島全てで栽培されているほか、山間の渓流沿いなどで野生化したものも見られます。ハワイには300以上の品種があり、栽培技術は世界のどの地域よりも発達しています。ハナレイ(Hanalei、カウアイ島)のカロ畑が特に有名です。   高さ1mほどに生長します。野生のものは、栽培種よりも小型であることが多いようです。葉は長さが25~45cm、幅が12~32cmで、ハート型の明るい緑色です。根茎は最大で直径15cmになります。       火を通したカロの球茎をすりつぶしたものに水を加えて練り込んで、やや粘りのあるペースト状にしたものはポイ(poi)とよばれ、ポリネシア人の主食でした。今日でもハワイではよく食べられます。また、すりつぶした生の球茎にをココナッツミルクと混ぜて焼いたプディングは、クーロロ(kūlolo)と呼ばれます。     日本語名:サトイモ、タロ ハワイ語名:kalo 英語名:― 学名:Colocasia esculenta 分類:サトイモ科(Araceae)サトイモ属(Colocasia) その他:ポリネシアン移入種(Polynesian introduction)  ...

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オオカミウオの話

オオカミウオの話 子供の頃よく行く水族館に寒い海に住む魚の水槽があって、その中の怖い顔をした魚に釘付けになっていました。ハワイなどの暖かい海に住む魚と違い、寒い地域に住む魚はあまりカラフルではなく、ちょっと強面の物が多い気がします。今回は、この子供の頃に釘付けだった北国の魚、オオカミウオのお話をさせて頂きたいと思います。 オオカミウオはスズキ目ゲンゲ亜目オオカミウオ科オオカミウオ属に属する魚です。オホーツク海、ベーリング海などの寒い海に分布し、日本でも東北地方や北海道で見られます。北大西洋に住むものも合わせると、オオカミウオ属の魚は4種ほど存在します。日本名の「オオカミウオ」は、英語名の”Wolffish”をそのまま訳したもの(日本で見られるオオカミウオはBaring wolffishと呼ばれます)ですと。体長は1mほどで、水深50-100mの岩礁に住んでいます。オオカミウオは鋭そうな前歯と臼歯のような奥歯、それに強い顎を持っていて、貝などを貝殻ごと砕いて食べることができます。また、カニなどの甲殻類も好んで食べるようです。 オオカミウオは日本ではあまり食用にはされませんが、食べられない魚というわけではなく、北欧などでは食べられています。美味しいと言われるギンポの仲間ですから、食べてみたら美味しいんじゃないかとは思いますが、やっぱりあの顔は申し訳ないですが食欲をそそられませんよね。...

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ミヤマハッカン

ミヤマハッカンは、ニワトリくらいの大きさのキジです。パキスタン北部、ネパール、ブータン、アッサム、ミャンマー、タイ、中国南部に分布します。ハワイには1962年にハワイ島のプウ・ワア・ワア(Pu’u Wa’a Wa’a)に移入されました。それから10年ほど経った後に急激に数を増やし、今ではハワイ島の標高300m~2,300mの湿潤な森に広く生息しています。 全長73cm、雌雄異色。雄の成鳥は光沢のある濃い青色で、胸は灰色です。雌はやや小型で、茶色の斑模様があります。雌雄とも目の周りは赤い皮膚が裸出しています。冠羽があり、尾は長くカーブしています。 森の中では警戒心が強い鳥ですが、特に早朝と夕方には道路沿いや開けた場所に出てきて、餌である種子や昆虫などを探しながら歩き回る姿がよく見られます。ハワイ火山国立公園内のキープカプアウル(Kīpukapuaulu、別名:バードパーク)などでは人に慣れていて、間近で見ることができます。英語名であるKalij PheasantのKalijは、インド北部での本種の呼び名です。Pheasantはキジ科の鳥の総称です。 日本語名:ミヤマハッカン ハワイ語名:― 英語名:Kalij Pheasant 学名:Lophura leucomelanos 分類:キジ科(Phasianidae) その他:外来種(alien)...

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アナゴの話

前回はチンアナゴの仲間のニシキアナゴのお話しをさせて頂きました。チンアナゴもニシキアナゴもウナギ目アナゴ科の魚で、あの食用になるアナゴとも同じ仲間になります。そこで今回は、私達がよく食べている「アナゴ」についてお話ししたいと思います。 私達が天ぷらやお寿司で頂くアナゴは「マアナゴ」という魚で、ウナギ目アナゴ科クロアナゴ亜科に属しています。体長はオスが40cm、メスが90cmと、メスの方がかなり長くなっています。体側に沿って白い点が並んでいるのと、口を閉じた時に下あごが上あごに隠れるのが特長です。日本では北海道より南から東シナ海にかけての浅い海の砂泥底に広く分布していますが、食用となる時は東京湾の羽田沖で捕れるものが特に「江戸前」とされています。昼間は岩などの隙間に身を隠し、夜になると泳ぎだして小魚や貝類、ゴカイなどを捕食する夜行性です。「アナゴ」という名前は、昼間穴に潜んでいる姿から付けられたそうです。 アナゴやウナギの幼生はレプトケファルスト呼ばれる平たくて透明な魚です。特にマアナゴの幼生はノレソレなどと呼ばれ、食用にされることもあります。日本では食用としてお馴染みのアナゴですが、ハワイではほとんど見かけることがなく、お寿司もアナゴの代わりにウナギを出している店がほとんどです。このアナゴの話を書いていて、久しぶりに美味しいアナゴのお寿司が食べたいな、と思ってしまいました。...