現在の私の専門は海藻で、所属する研究室も非公式に「海藻研」なんて呼ばれたりしているのですが、この「かいそう」という文字を変換すると、「海藻」と「海草」と二通り出てくるのです。どっちでも同じように思えますが、実は海藻と海草は全く別の植物なのです。海藻は英語にするとseaweedもしくはalgae(アルジーまたはアルギー)で、日本人の食卓に欠かせないワカメや昆布、海苔などを含む藻類のことです(ちなみにalgae は複数形で単数形はalga(アルガ))。一方、海草は英語でseagrassで、陸上の植物と同じような葉っぱを持つ被子植物のことをいいます。今回はこの海藻と海草のお話をさせて頂きます。
海藻は主に波の強く当たる岩場に生息していて、海水に溶け込んでいる養分を体から直接吸収します。これに対し海草は砂や泥などの柔らかい底に根をはって、そこから養分を吸収します。海藻は主に胞子によって繁殖しますが、海草は陸上の植物のように花を咲かせて種を実らせることで繁殖します。海藻と海草は進化の過程も大きく違います。陸上の植物は元々海藻から進化したものです。反対に、陸上の植物が再び海中に生息地を移したのが海草です。
海藻は持っている色素によって大きく緑藻(green algae)、紅藻(red algae)、褐藻(brown algae)の3種類に分けられます。海苔は紅藻、昆布は褐藻です。ワカメは緑色をしている気がしますが、分類上は褐藻類になります。ハワイの海には500種類以上の海藻類が生息していますが、海草はたったの2種類だけです。私も未だに、この2種類の海草が海の中に生えているのを見た事がありません。