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イリアヒ

イリアヒ(ビャクダン、サンダルウッド)その1 イリアヒ(ʻiliahi)は、香木として知られるビャクダン(白檀、Santalum album)のなかまです。ビャクダン属は25種あり、その多くはインド、東南アジア、オーストラリアが原産です。他にはハワイ諸島に4種、ファン・フェルナンデス諸島とマルキーズ諸島にそれぞれ1種ずつ存在しますが、ファン・フェルナンデス諸島の種は過剰な伐採の末に絶滅したとされています。ハワイの4種はすべて固有種で、イリアヒと呼ばれます。4種とも個体数は多くありません。 常緑の木本です。葉は対生で楕円形、卵型、または倒卵型。花は白色または赤色で、直径約6mm、花弁は4枚。果実は長さ約2cmで、オリーブに似ています。材の中心部は、ビャクダン類独特の香りがあります。ビャクダンと同じく半寄生(hemiparasitic)で、細根からコアやプーキアヴェなどの他の植物の養分を吸収します。 S. ellipticumは、ハワイのすべての主要な島々の標高の低い乾燥した地域に分布する、高さ1~5mの小高木です。イリアヒアロエ(ʻiliahialoʻe)とも呼ばれます。英語ではcostal sandalwood(海岸のビャクダンという意味)と呼ばれます。S. freycinetianumは、ハワイ島以外の主要な島々の湿った森に主に分布する、高さ1~12mの低木または高木です。英語でmountain sandalwood(山のビャクダン)とも呼ばれます。 その2に続く...

チョウチンアンコウの話

前回は深海に住むテンガイハタのお話をさせていだだきましたが、深海魚にはまだまだたくさん面白いものがいます。その中でも、チョウチンアンコウといえば、名前だけでもお馴染みなのではないでしょうか。今回は、このチョウチンアンコウについてお話しさせていただきたいと思います。 チョウチンアンコウは、アンコウ目チョウチンアンコウ科に属する魚です。ちなみにチョウチンアンコウ科には、チョウチンアンコウを含む18種が属しています。主に大西洋に分布していますが(英語名はAtlantic footballfish)、太平洋にも生息し、日本でも見られることがあります。生息水深はテンガイハタと同じ、水深200?800mの中深層が中心であると考えられています。体長は60cmほどになりますが、この大きさになるのは雌のみで、雄は4cmほどにしか成長しません。このように雄が雌より極端に小さいことを矮雄(わいゆう)と言います。チョウチンアンコウに近い仲間には、この小さい雄が雌に寄生し、口が雌の皮膚に完全にくっついてしまうものもあるのですが、チョウチンアンコウ科の雄は雌に寄生せずに自由生活を送ります。 さて、チョウチンアンコウといえば忘れてはいけないのが、その頭に付いている「提灯」ですよね。ご存知の方も多いと思いますが、これは餌をおびき寄せるために使われます。この釣竿のような器官は誘引突起(イリシウム)、その先端は擬餌状体(エスカ)と呼ばれます。このエスカが発光し、餌をおびき寄せるのです。...

ハワイ・クリーパー

ハワイ・クリーパーは、ハワイミツスイの一種です。ハワイ島にのみ生息します。マウナ・ケア(Mauna Kea)、マウナ・ロア(Mauna Loa)、フアラーライ(Hualālai)の、標高約1,370m以上のコアとオーヒアの森にすみますが、生息数は少なく、絶滅の危機に瀕しています。不思議なことに、本種のハワイ語名はありません。 全長11cm。雌と雄は似ていますが、雄のほうが体が明るい色をしています。上面はオリーブ色、下面は淡い色、喉は白色です。目の周りにアライグマのような黒班があります。嘴は明るい色で、ほんのわずかに下にカーブしています。雌や未成鳥のハワイ・アマキヒに似ているますが、ハワイ・クリーパーのほうが嘴のカーブが少なく、喉が白く、眼の周りの黒班が広いのが特長です。 コアなどの木の幹や枝を動き回り、餌を探します。主に虫を食べますが、稀に花の蜜も吸います。繁殖期は1~5月です。単独でいることが多いですが、アーケパ、アマキヒ、アキアポーラーアウなどのハワイミツスイ類たちと一緒になって小さな群れを作ることもあります。 日本語名:― ハワイ語名:― 英語名:Hawai‘i Creeper 学名:Manucerthia mana 分類:アトリ科(Fringillidae) その他:ハワイ島固有種(endemic)、絶滅危惧種(endangered)...

テンガイハタの話

私は物心ついた時から魚の図鑑を見るのが好きだったのですが、その中でもものすごく興味があったのが深海魚でした。深海魚は水族館などで生きているのを見ることがほぼできませんし、見た目が奇妙なものが多いというのも、興味をそそられる理由でした。今日はあまり見ることができない深海魚について。あまり見ることができないので、使える写真が標本しかありません。ご了承ください。今回はそんな魚の一つ、テンガイハタをご紹介したいと思います。 テンガイハタはアカマンボウ目フリソデウオ科に属する魚です。実際は深海魚というよりは、中深層と呼ばれる水深200-800mあたりに生息していると言われています。日本では房総半島から土佐湾にかけて、その他に中部太平洋やニュージーランドで見られるそうです。ハワイでは仲間のアカマンボウはよく水揚げされますが、テンガイハタについてはあまり知られていません。 テンガイハタは比較的大型の魚で、体長は160cmから、大きいものでは2mを優に超えます。私が惹かれるのはやはりその見た目です。と言っても、標本か写真か絵でしか見たことがありませんが。生きているテンガイハタは体表が全体的に銀色で、赤い背びれが頭部から尾部まで続いています。この背びれを波打つようにさせながら、立ち泳ぎをするようにして海中を漂うように泳ぎます。さらにテンガイハタは口が伸び縮みするらしく、クラゲや浮遊しているプランクトンを食べると言われていますが、詳しいことはまだよくわかっていません。こんな奇妙で大きな魚が海に生息していて、それがさらにどんな魚かまだよくわかっていない、というのが非常に面白いと思います。...

ニウ(ココヤシ)その2

ニウ(ココヤシ)その1の続きです。 高さ30mに達する高木です。幹は通常根元付近が太く、緩やかに曲がって伸びます。葉は羽状複葉で、長さ6m以上になります。小葉は約100枚あります。樹齢10年を過ぎると、芳香がある黄色い花が咲きます。果実(ココナッツ)は長さ20~30cmの楕円形で、皮の内側は厚い繊維層に覆われています。木の寿命は70年以上で、ときには樹齢100年を超える場合もあります。 世界でもトップクラスの有用な樹木とされています。古代ハワイ人も、ニウのほとんどの部分を利用し、建築、カヌー、楽器、容器、食用、飲用、燃料、薬品など様々な用途に使いました。そんな利用価値の高い木ですが、太平洋の他の島々に比べると、ハワイで植えられた数は少ないとされています。その理由の一つとして、料理や医療をはじめとした様々な利用において、ハワイ人はココナッツオイルよりもククイから採られるククイオイルのほうを好んだのではないかと考えられているそうです。 幹にアルミニウム製の板が巻かれているのを見かけることがあります。これは、ネズミが登って木の上に巣を作るのを防止するためです。 日本語名:ココヤシ ハワイ語名:niu、olonani 英語名:coconut palm 学名:Cocos nucifera ヤシ科(Arecaceae)ココヤシ属(Cocos) ポリネシアン移入種(Polynesian introduction)...

ニウ(ココヤシ)その1

ヤシの木の仲間は数多くありますが、そのなかでおそらく最も有名なのがニウ(ココヤシ)でしょう。今日ハワイで見られる様々な種類のヤシの木のなかでも圧倒的に本種が多く、日本人にとっても、ハワイを含めたいわゆる「南の島」のシンボルとして真っ先に思い浮かぶ木です。観光客は、ホノルル空港に到着すると同時に、ニウを見上げて、風に揺られる葉の音を聞いて、胸が踊ります。逆に旅行からホノルル空港に帰ってきたカマアーイナ(ハワイ在住者)たちにとっては、地元に戻ってきたという安堵感をもっとも与えてくれる木のひとつではないでしょうか。   そんな南の島のシンボルであるニウですが、ハワイの在来種ではなく、古代ポリネシア人によって持ち込まれた、いわゆるカヌープラントのひとつです。ハワイ準州時代(1898~1959年)には、公式な『準州の木』に指定されていました。   原産地はマレシア植物区系区と考えられていますが、詳しいことはわかっていません。世界中の暖かい地域に広く植えられていて、ハワイでは海岸沿いを中心に古くから植栽され、主要6島すべての標高600m以下の場所で見られます。庭、道路、ホテル、公共施設の敷地などにも多く植えられています。 その2に続く ———————————————————————  ...

伊勢海老(イセエビ)の話

今年のお正月のことですが、日本食スーパーにイセエビのお刺身が売られていました。お刺身になったイセエビ(というかイセエビ自体)、普段は売られていないので、「お正月っぽい!」とテンションが上がりました(ハワイにいるとお正月を感じにくいのです)。そこで今回は、このイセエビのお話をさせて頂きたいと思います。   イセエビは厳密に言うと、節足動物門軟甲綱十脚目イセエビ科イセエビ属に属し、日本近海のみに生息する大型エビの一種のみを指すのですが、もっと一般的には、イセエビ科に属する幾つかの種のことを言います。英語では“Spiny lobster”(スパイニー・ロブスター、棘だらけのロブスター)と呼ばれます。ちなみに、イセエビといわゆるロブスターは、実はちょっと違う生き物です。ロブスターは十脚目ザリガニ亜科に属していて、その分類の通りザリガニに近く、ハサミの大きい大型エビです(レッドロブスターの看板を思い出してもらえるとわかるのではないでしょうか)。これに対しイセエビは、大きなハサミを持っていません。   イセエビは世界中の暖かい海に分布していて、その多くがサンゴ礁などに隠れて生息しています。写真のアカイセエビは、小笠原諸島と伊豆諸島にのみ生息するイセエビの仲間です。ハワイにもハワイ固有のハワイイセエビが生息していて、よく漁の対象になっています。...

ピロ その2

ハワイで見られるタマツヅリ属の植物のなかでクーカエネーネー(kūkaenēnē)と呼ばれるC. ernodeoidesは、ハワイ島やマウイ島の標高の高い開けた溶岩地帯や噴石地帯で比較的見つけやすい種です。大きさは通常2~3mくらいで、低く這うように生長します。葉は長さ6~12mmで密集しています。果実は直径8~20mmの光沢がある黒色です。ハワイ島とマウイ島の標高1,220~2,590mの亜高山帯の林地に自生します。   クーカエネーネーは、ハワイの『州の鳥』であるネーネー(ハワイガン)との関係が深いようで、クーカエネーネーとは「ハワイガンの糞」という意味です。また本種は、アイアカネーネー(ʻaiakanēnē)とも呼ばれますが、こちらは「ハワイガンの食べ物」という意味です。その名の通り、果実はハワイガンの好物です。他にもレポネーネー(leponēnē)や、プーネーネー(pūnēnē)などの別名がありますが、いずれもハワイガンに関係した名前です。クーカエネーネーにとっては、ハワイガンは種子を分散してくれる存在です。   古代ハワイ人は、クーカエネーネーの内側の樹皮を黄色い染料に、果実を紫色や黒色の染料に使いました。また、果実を使ってレイが作られることもあったそうです。 おわり 日本語名:― ハワイ語名:pilo、kūkaenēnē(C. ernodeoides) 英語名:― 学名:Coprosma spp. 分類:分類:アカネ科 (Rubiaceae) タマツヅリ属(Coprosma) その他:ハワイ固有種(endemic)  ...

シロイルカの話

先日、八景島シーパラダイスを紹介する日本のテレビ番組を見ました。八景島シーパラダイスは、子供の頃に見たシロイルカのテレビCMが非常に印象に残っています。一度だけ連れて行ったことのある長女も、シロイルカのことをよく覚えていました。そこで今回は、このシロイルカのお話をさせて頂きたいと思います。 シロイルカはクジラ目ハクジラ亜目イッカク科シロイルカ属に属する動物です。英語名ではBeluga(ベルーガ)と呼ばれます。体長は4?5mで、名前の通り体が白いのが特徴です。名前には「イルカ」とついていますが、イルカではなくどちらかというと小型のクジラになります。以前「イルカの話」の中でも触れていますが、実はイルカとクジラは生物学的に明確に分類されているわけではなく、体長が大体4m以下のハクジラをイルカと呼んでいるだけなのです。 シロイルカはもともとは北極海周辺に生息している動物ですので、ハワイで見ることはできません。体が白いのも、氷の多い極近辺においての保護色だからと言われています。珍しいのは、シロイルカが1年に一度脱皮をすること。シロイルカの赤ちゃんは灰色なのですが、成長とともに脱皮を繰り返し、徐々に白くなっていくのです。しかし脱皮と言っても、エビや蛇のように一度に全部がスルッと抜けるのではなく、底の石や岩に体を擦り付けて、表面の古くなった皮を剥ぎ取るようにして取り除いていきます。水族館で飼育されているシロイルカもプールの底や壁などに体を擦り付けて脱皮するようなので、次回水族館でシロイルカを見かけたら、よく観察してみようと思います。...

ピロ その1

ピロは、アカネ科タマツヅリ属の低木です。タマツヅリ属は約90種からなり、その多くがニュージーランド原産です。他にはオーストラリアに8種、ニューギニアに11種、そしてハワイに13種などがあります。ハワイでは総称してピロと呼ばれますが、そのうちのいくつかは外見が著しく異なるため、ハワイ人はクーカエネーネー(kūkaenēnē、C. ernodeoides)やコーイー(kōī、C. kauensis)などの別名をつけました。 ハワイの13種は、すべて固有種です。主要な島々の標高が約300mより高い森に自生しますが、島ごとの分布は種によって異なります。例えば、C. kauensisはカウアイ島のみに分布し、C. ochraceaはカウアイ島以外のすべての主要な島々に分布します。見た目の特徴は種によって異なりますが、一般的には、枝の多い潅木で、葉は対生で鋸歯がなく、直径約10mmの明るいオレンジ色、赤色、または黒色の実をつけます。個体によって雌株と雌株があり、それぞれ雄花と雌花が咲きます。 属名のCoprosmaは、ギリシア語の「kopros(糞)」と「osme(臭い)」から来ています。これはタマツヅリ属の一般的に共通した特徴である、葉や実をつぶした時の不快な臭いに由来します。ハワイ語のピロ(pilo)にも、「沼のような悪臭」という意味があります。しかし、少なくとも現在のハワイの種には、そのような悪臭はありません。 その2に続く ——————————————————————— 「画像1」ピロ(Coprosma kauensis) 「画像2」ピロ(Coprosma montana) 「画像3」ピロ(Coprosma montana)雌花...