ハワイからのコンテンツ: 海の中を覗いてみれば

ナンヨウハギの話

エプソン品川アクアスタジアムのナンヨウハギ ちょっと前にカクレクマノミのお話をさせて頂きましたが、カクレクマノミといえばやっぱりニモ。映画「ファインディング・ニモ」には色々な海の生き物が登場しますが、その中でもニモのお父さんと一緒にニモを探す青い魚、ドリーといえば、皆さんすぐにどの魚か思いつくのではないでしょうか?ワイキキ水族館でも、カクレクマノミを「ニモ」と呼んでいる子供達は大抵、この青い魚を見ると「ドリー」と呼んでいます。そこで今回は、この「ドリー」のお話です。 青・黒・黄のきれいな体色 ドリーは日本名でナンヨウハギと呼ばれる魚で、スズキ目ニザダイ科に属しています。サンゴ礁の海に生息していて、体長は成魚で大体20cmくらいです。日本でも暖かい南の海で見られるようです。食べ物は主に動物プランクトンです。特徴はやはりその体の色でしょう。体の大部分はきれいな青色をしていて、体側に黒い線が入っています。尾ひれは黒い縁取りの中が黄色い三角になっていて、熱帯魚らしいきれいな配色です。そのため観賞魚として人気が高く、多くの水族館のサンゴ礁の海の水槽で見る事ができます。 サンシャイン国際水族館のナンヨウハギ 私は水族館に行くとたくさん写真を撮るのですが、このナンヨウハギ、動きが速いのでなかなか上手くカメラに納まってくれません。フムフムヌクヌクアプアアとともに、上手く写真が撮れると非常に嬉しい魚です。...

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マンボウの話

前々回、前回と、この夏日本の水族館で出会った大型の魚のお話をさせて頂きましたが、池袋サンシャイン国際水族館ではもう一種、私の大好きな大きな魚に出会う事ができました。それはマンボウ。今回は、このマンボウのお話をさせて頂きます。 マンボウはフグ目マンボウ科に属する魚です。英語名はSunfish、科学名はMola molaといい、テストの時に非常に覚えやすかったです。皆さんご存知の通り、体は縦に平たく丸型で、大きくなると体長は3m、体重は2トン以上にもなります。体の上下に突き出ているのは背びれと尻びれで、体の後ろにあるのは実は尾びれではなく、「舵びれ」と呼ばれる背びれと尻びれが変形したものです。舵びれはその名の通り、泳ぐ時に舵を取っています。尾びれの他に腹びれもなく、面白い形態の魚です。かわいい(?)おちょぼ口は、フグの仲間ならでは。 マンボウはよく海面近くを漂っている姿が見られるので、のんびり海流に身を任せて生きていると思われがちですが、実は結構深海まで潜ったりします。また、マンボウは泳ぎがあまり上手ではなく水槽にぶつかって弱ってしまうため、水族館での飼育は一般的に難しいと言われています。水族館のマンボウの水槽にビニールの膜などが張られているのはそのためです。水族館でマンボウに出会えるのは、私にとってとても嬉しい事なのです。...

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メガネモチノウオの話

すみだ水族館のメガネモチノウオ 前回はサンシャイン国祭水族館で出会ったピラルクのお話をさせて頂きましたが、今回の日本滞在ではもう一つ水族館を訪れる事ができました。それは東京スカイツリーに隣接する「すみだ水族館」です。新しい水族館はタダでさえ奇麗でワクワクするのですが、飼育の裏側を垣間見る事ができるラボがあったりと、なかなか見応えのある水族館でした。今回は、このすみだ水族館で出会ったメガネモチノウオのお話です。 メガネモチノウオはスズキ目ベラ科の大型の魚です。多くの方々には「ナポレオンフィッシュ」という別名の方がピンと来るかもしれません。その昔、佐野元春さんの曲で「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」という曲がありましたが、年齢がバレますね。ナポレオンフィッシュというとかっこいいですが、初めて日本名がメガネモチノウオだと知った時はその大きな体になんだか似つかず、拍子抜けしました。この名前は、口元から目を通って目の後ろの方まで線が通っていて、眼鏡をかけているように見える事から付けられました。オスはこの線は成長に連れ薄くなっていきます。 オスは2m近くになる事もあり、体の色が来褐色から青緑色ときれいな事から、ダイバーにも人気の魚です。日本でも鹿児島や沖縄の南西諸島沿岸に生息しています。しかし最近では絶滅危惧種にも指定され、個体数が激減しています。いつまでもその優雅な姿が見られるといいですね。...

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ピラルクの話

6月に所用で3週間ほど日本に滞在していました。日本で楽しみなのは水族館に行くこと。こぢんまりとしたワイキキ水族館も好きですが、日本の大きくてきれいな水族館はいつ言ってもワクワクします。今回の滞在では、私のホームグラウンドとでも言うべき池袋サンシャイン国際水族館に5年振りに行く事ができました。そこで一番感動したのは、子供の頃憧れだったピラルク(ピラルクーとも呼ばれます)を見られた事です。今回は、海の中を少し離れ、このピラルクのお話をさせて頂きたいと思います。 ピラルクはアロワナ目アロワナ科に属する魚で、アマゾン川に生息しています。最大の特徴はやはりその体の大きさでしょう。ピラルクは世界最大の淡水魚と言われています。私も子供の頃、図鑑で4mにもなるというのを読んで、実際に見たらどんなに大きいのだろうと憧れたのです。実際に見ると巨大なアロワナという感じですが、頭が横に平べったく、尾に向かって縦に平べったくなっているのが特徴的です。1億年以上も姿形が変わっていないといわれ、シーラカンスと同様生きた化石と言われています。 私が子供の頃読んだ図鑑には、ピラルクの大きさを示すエピソードとして、その大きなうろこが靴べらとして使われていると書かれていました。実は今でも密かに、ピラルクの鱗の靴べらがなんとか手に入らないかなと思っているのです。...

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アホウドリの話

先日、海藻のサンプルを採取しにカエナ・ポイントまで行きました。カエナ・ポイントはアホウドリの繁殖地になっています。アホウドリというと名前にとてもインパクトがありますが、実物は意外に大きくてとてもかっこいい鳥です。アホウドリという日本語名は、陸上での動きが遅く簡単に捕獲できたことに由来するといわれます。 私が初めてアホウドリの仲間を間近で見たのはミッドウェイ環礁に行った時でした。ミッドウェイはコアホウドリやクロアシアホウドリの営巣地になっていて、私が訪れたのはちょうど繁殖期の始まりでした。初日には疎らだった巣の数が日に日に増えていき、一週間の滞在を終えるころには辺り一面巣に覆われていたほどです。アホウドリは生まれた場所に戻ってきて巣を作ります。一度つがいになると一生相手を変えることなく、毎年一つだけ卵を産みます。 ミッドウェイではコアホウドリのヒナの死骸と一緒に、使い捨てライターなどの沢山のプラスチック製品があるのを見かけました。ヒナは親鳥が海から取ってきて半分消化した餌を口移しでもらいますが、親鳥が海に浮かんでいるプラスチック製品を餌と間違え食べ、そのままヒナに与えてしまいます。ヒナは親鳥のように食べた物を吐き出すことがまだできないため、お腹の中に消化できないプラスチックが溜まって満腹になり、餌が食べられなくなって死んでしまうのです。中には日本語の書かれたプラスチックもありました。日本で捨てられたゴミが遠く離れたミッドウェイのアホウドリにまで影響を与える、何とも考えさせられる光景でした。...

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サンゴの話

ハワイのような南の島といって思い浮かべられるものの一つがサンゴ礁ですね。サンゴは刺胞動物門に属する立派な動物です。世界中にはサンゴ礁を造るサンゴ(主に六放サンゴ亜網イシサンゴ目に属する)は1300以上の種類が存在するといわれています。そのうちハワイで見られるのは約40種類ですが、その中でもたった4種類のサンゴが全体の90%を占めていると言われています。カリフラワー・コーラル(cauliflower coral, Pocillopora meandrina)、ローブ・コーラル(lobe coral, Porites lobata)、フィンガー・コーラル(finger coral, Porites compressa)、そしてライス・コーラル(rice coral, Montipora capitata)です。 サンゴの成長はあまり速くないというのは皆さんご存知だと思いますが、速いもので1年に15センチ、遅いものだと1年に1センチしか大きくなりません。サンゴは6本又はその倍数の触手を持つ小さなイソギンチャクのようなポリプの集合体で、炭酸カルシウムの骨格を作り、それがサンゴ礁を作り上げます。ちなみに、アカサンゴなどの宝石として使われるサンゴは造礁サンゴとは違う八放サンゴ亜網に属し、深海に住んでいます。 サンゴのポリプには褐虫藻(zooxanthellae)という単細胞の藻類が共生していて、この褐虫藻が日中光合成をしてサンゴに養分を提供しています。サンゴの青や緑の色は、この褐虫藻によるものです。深いところには十分な光が届かず褐虫藻が光合成できないので、サンゴは比較的水深の浅いところでのみ見られます。サンゴの白化現象が話題になることがありますが、これは褐虫藻がサンゴから放出されることによって起こります。海水温が高くなり過ぎると褐虫藻 がサンゴから失われるため、地球温暖化が白化の原因の一つではないかと言われています。...

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イカの話

ちょっと前の事ですが、ワイキキで海藻採取のために泳いでいたところ、2匹のイカに遭遇しま した。泳いでいるイカを間近でみる事はなかなかありませんので、しばし海藻の事は忘れて見と れていました。そこで今回は、イカのお話をさせて頂きたいと思います。 イカは少し前にご紹介したタコやと同じ軟体動物の仲間です。ご存知の通り10本の腕があるので 十腕形上目に属します。ちなみにタコは八腕形上目です。腕にはタコと同様吸盤が並んでいます が、実際は10本中8本だけが腕で、2本は吸盤が先端にしか付いていない「触腕」と呼ばれるもの です。この2本の触腕は伸び縮みすることができます。 英語でイカにあたる言葉には、よく知られた“squid”ともう一つ“cuttlefish”の二つがありま す。“Squid”は十腕形上目の中のツツイカ目のイカ、一方“cuttlefish”はコウイカ目のイカを 指します。ツツイカ目のイカは、スルメイカのような細長い胴体の先に三角形の俗に言う「イカの 耳」(本当はヒレです)が付いているものを思い浮かべて頂ければと思います。それに比べてコウ イカ目のイカは、体がもっと丸みを帯びていて、「イカの耳」に当たる部分も胴体の周りをひら ひらと覆うように付いています。有名どころでいうとモンゴウイカでしょうか。今度スーパーや 水族館でイカを見る時は、それが“squid”か“cuttlefish”なのか当ててみて下さい。...

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ウツボの話

先日ダイヤモンドヘッドの下の方の岩場で海藻を採取していると、穴からニョロニョロッとウツボが出てきました。夏を海で過ごす事が多かった幼少時代、親にウツボに気を付けろと言われたり、素潜り名人からウツボに噛まれた時の武勇伝(?)を聞かされたりして、私の中ではすっかりウツボは怖い魚というイメージが染み付いていました。でもハワイのローカルの人は海でウツボを見つけると結構喜んでいます。そこで今回はウツボのお話です。 ウツボはウナギ目ウツボ亜目ウツボ科に属する魚で、ウナギ同様見た目通りの細長い体が特徴です。魚類に見えないのは、腹ビレと胸ビレが退化し、背ビレと尾ビレもつながっているからでしょうか。体が厚い皮膚に覆われていて、一見鱗が無いように見えますが、実は小さな鱗が皮膚の下に埋もれています。背ビレと尾ビレまでも皮膚に覆われているので、体全体がすっぽり皮膚に覆われている感じです。ウツボのもう一つの大きな特徴として、肉食性で大きな口と鋭い歯を持ちます。顔をよく見ると、口は目よりも奥まで開くようになっていて、小型の魚やエビ・カニ、タコなどを餌としています。   歯が鋭く噛みつく力も強いので、私が子供の頃脅されたように、確かに人間でも噛まれると大変です。しかし、ウツボも好き好んで人を襲うわけではなく、こちらが余計な攻撃をしたり近付き過ぎたりしなければ、噛まれることはまずありません。歳を取ってそれが分かってからは、以前ほどウツボを恐れることはなくなりました。...

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クラゲの話

先日、ハナウマ湾にハコクラゲが大量発生したニュースを見ました。40人近くの人が刺されたそうで、ハナウマ湾もその日は閉鎖されました。そこで今回は、クラゲのお話をさせて頂きたいと思います。 クラゲはサンゴと同じ刺胞動物の仲間です。クラゲは刺すイメージがあると思いますが、刺胞動物は刺細胞という細胞の中に「刺胞」と呼ばれる小器官を持っていて、これがエサなどに触れると針を刺して毒を注入するのです。実は、私達が海でよく見るクラゲには目と口があるのです。目は眼点と呼ばれ、クラゲの傘の淵に付いていて、よく見ると淵に沿って小さな点々が間隔を置いて並んでいます。目といっても、私たちの目のように色や物の形が見えるわけではなく、光の射してくる方向を感知できるといった程度のものです。口は傘の内側の中央にあり、ここからエサを体内に取り込みます。 さて、最初に触れたハコクラゲですが、ハコクラゲは名前の通り箱形をしたクラゲです。ハコクラゲのうち数種は猛毒を持っていて、いわゆる「毒クラゲ」と呼ばれるのはこれらです。この毒クラゲは満月の1週間から10日後に発生し、ワイキキやハナウマ湾にもよく大量に出現します。もしこのクラゲが発生していたら(注意報やサインが出ています)、海には入らないようにしましょう。...

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カクレクマノミの話

最近、私が教えている授業の中で、カクレクマノミとイソギンチャクの共生の話が出てきました。カクレクマノミといえば、人気のディズニー映画「ファインディング・ニモ」の主人公ですね。ワイキキ水族館にカクレクマノミの水槽がありますが、この水槽の前では必ずと言っていいほど、子供たちが「ニモだ!」と言っているのを聞くことができます。今回は、このニモのお話をさせて頂きます。 オレンジ色の体に白い3本のラインが特徴のカクレクマノミは、スズキ目スズメダイ科クマノミ亜科クマノミ属の魚です。クマノミは先程も出てきたように、大きなイソギンチャクを住処にしています。イソギンチャクはクラゲと同じ刺胞動物で、触手に毒入り針を持った細胞があるので、普通の魚はこの毒針にやられてしまいます。しかし、クマノミはこの毒に反応しないので、イソギンチャクの中にいることで外敵から身を守っているのです。先程「共生」といいましたが、共生は両方の生物が何らかの利益を得る関係性です。しかし、クマノミがイソギンチャクに守られているのに対し、イソギンチャク側がこの関係から何らかの利益を得ているかはいまいちハッキリしていません。イソギンチャクにとって害となる小動物をクマノミが食べて取り除いている、という説もあります。 クマノミは通常、一組のつがいと何匹かの小さなオスが同じイソギンチャクに住んでいます。つがいの大きい方がメスです。メスが死ぬと、オスが性転換してメスになり、次に大きなオスが“昇格”して新たなつがいとなります。オスが急にメスになるってなんだか不思議ですが、実は魚の世界では、性転換はよくあることなのです。...