ハワイからのコンテンツ: 海の中を覗いてみれば

タチウオの話

私が子供の頃のことですが、家の近所に週に何回か移動魚屋さん(車で移動しながら魚介類を販売している魚屋さん)が来てくれて、いつも夕飯の材料をそこで調達していました。その魚屋さんがよく持ってきてくれるのがタチウオ(太刀魚)で、私も好んで食べていた気がします。今回は、この太刀魚についてお話しさせて頂きたいと思います。 タチウオはスズキ目サバ亜目タチウオ科に属する魚です。タチウオ(太刀魚)という名前は、その見た目が刀に似ている事から付けられたと言われているように、銀色に輝く細長い体をしています。体長は2mを超えることもあります。魚屋さんが持ってきてくれるのは切り身だったので当時は全身を見たことはなかったのですが、他の青魚に比べても体表が光り輝いていたように記憶しています。この銀色の体表はグアニン層と呼ばれるもので、昔はラメの材料になっていたそうです。 タチウオは水深の比較的深いところ(400mくらい)で生活しているため、普段ハワイで見かけることはありませんが、以前頭部をサメに食べられたらしいタチウオの仲間がハワイ島沖で発見されたことがあり、深海には生息しているものと思われます。しかし、この時は当初「謎の魚」として話題になっていたので、あまり頻繁に見られる魚ではないのでしょう。ハワイに来てからは一度も食べたことがないので、どんな味だったのか、また日本で食べてみたいです。...

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カスミチョウチョウウオの話

前回はハワイ固有種のチョウチョウウオであるミレットシードバタフライフィッシュのお話をさせて頂きましたが、長女に「今回は何の生き物について書こうかな?」と相談したところ、「バタフライフィッシュは?」という答えが返ってきました。そこで今回は前回とは別の種のチョウチョウウオをご紹介したいと思います。 カスミチョウチョウウオはハワイを含む中部太平洋から西太平洋に主に分布し、日本でも和歌山県より南で見ることができます。スズキ目チョウチョウウオ科カスミチョウチョウウオ属に属し、体長は最大で18cmほどになります。主な餌は動物プランクトンで、サンゴ礁外縁の外海に面した斜面付近に大きな群れを作って泳いでいます。日本語のカスミ(霞)チョウチョウウオという名前は、海の中が霞むくらい大群で泳ぐことがあることから付けられたようです。 カスミチョウチョウウオは英語ではPyramid Butterflyfish(ピラミッドバタフライフィッシュ)と呼ばれていて、黄色から茶色をした頭部と尾部、それらに挟まれた腹部が白いピラミッド型の模様になっています(尾びれも白です)。このピラミッド型の模様ですが、じっと見ているとピラミッドより山に見えてきます。富士山みたいだな、と思っていたら、どうやら日本のダイバーには「富士山チョウチョウウオ」と呼ばれて親しまれているそうです。なんだか非常に納得しました。...

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ミレットシードバタフライフィッシュの話

以前、トゲチョウチョウウオについてお話しさせていただきましたが、ハワイにはこの他にもたくさんのチョウチョウウオの仲間がいます。そこで今回は、ハワイで最もよく見られるチョウチョウウオである、ミレットシードバタフライフィッシュについてお話しさせて頂きたいと思います。 ミレットシードバタフライフィッシュはスズキ目チョウチョウウオ科チョウチョウウオ属に属する魚です。体長は約16cmで、黄色い体に黒い点々があるのが特徴ですが、ミレットシード(Milletseed)という名前は、この黒い点々がキビ(millet)の種(seed)に似ている事から付けられました。体が黄色いことから、英語ではレモンバタフライフィッシュ(日本語のレモンチョウチョウウオとは別の種)とも呼ばれます。また、ハワイ語ではLau wiliwiliと呼ばれ、これは体の形がwiliwiliの葉に似ていること、また、色がwiliwiliの落ち葉に似ていることから付けられたものです。しかし、この特徴である黄色い体色も、水族館などで飼育されていると白っぽくなってしまうようです。 ミレットシードバタフライフィッシュはハワイ固有種で、ハワイ諸島以外の場所には生息していません。ハワイでスノーケルやダイビングをされる時は、ぜひこの魚を見ていって下さいね。先程も言ったように、ハワイで一番多く見られるチョウチョウウオですので、比較的簡単に見つかると思います。...

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リーフィーシードラゴンの話

前回はジャイアント・ケルプのお話しをさせて頂きましたが、海藻の写真を見ていたら、リーフィーシードラゴンのことを思い出しました。これまでもリーフィーシードラゴンの仲間のタツノオトシゴやウィーディーシードラゴンのお話しはさせて頂きましたが、実は一番好きなリーフィーシードラゴンについてはお話ししたことがありませんでした。そこで今回は、このリーフィーシードラゴンのお話しです。 リーフィーシードラゴンはタツノオトシゴやウィーディーシードラゴンと同じ、トゲウオ目ヨウジウオ科に属する魚です。残念ながらハワイには生息しておらず、オーストラリアの南西部にのみ生息しています。体長は大きいもので40cmほどになり、細長い口で大型の動物プランクトンなどをストローのように吸って捕食しています。オスがお腹の中(育児嚢)でメスの産んだ卵を育てるのも、タツノオトシゴやウィーディーシードラゴンと一緒です。 リーフィーシードラゴンの一番の特徴は、やはり海藻に擬態したその外見でしょう。ウィーディーシードラゴンよりもさらに多くの海藻のような付属器官(皮弁)がたくさん付いています。この皮弁により、褐藻類に非常によく似た姿にカモフラージュしているのです。水の中を海藻のようにひらひらとゆっくり泳いでいる姿は優雅で、何時間でも見ていられるような気がします。...

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シュモクザメの話

ご存知のように、ハワイにはサーファーがたくさんいます。サーファーの友人に、たまにサーフィン中にサメに遭遇した話を聞きます。以前知り合いの女性サーファーが、「この前、ふと横を見たらシュモクザメがいたのよ。でも安心して。奴らは草食性だから。」なんて言っていたのですが、私ははっきり声を大にして「それは違う!」と言いたかったです。草食性のサメなんて聞いたことがないし、ましてやシュモクザメは人を襲うことだってあるのです。なぜ彼女がそんな勘違いをしていたのかは分かりませんが、今回はこのシュモクザメのお話をさせて頂きたいと思います。 シュモクザメは軟骨魚類綱メジロザメ目シュモクザメ科に属する魚です。シュモク(撞木)というのは、仏具の鐘を鳴らすのに使うT字型の道具で、もちろん頭がその形に似ていることから付けられた名前です。英語名はハンマーヘッドシャークで、やはり頭がハンマー(金槌)に似ていることから名付けられました。私も子供の頃、図鑑でシュモクザメを見ては「ものすごく面白い頭の形のサメだなぁ。」なんて思っていました。この左右に飛び出した頭の先に目と鼻腔があります。 シュモクザメは他のサメと違って群れをなして行動することが多く、ニュースなどでその映像をご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。先ほど人を襲うこともあると言いましたが、実は死亡例はほとんどありません。ホオジロザメなどに比べるとまだ危険性は低いですが、人を襲うことに変わりはないので、海で見かけた時は気をつけましょう。...

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リーフィーシードラゴンの話

前回はジャイアント・ケルプのお話しをさせて頂きましたが、海藻の写真を見ていたら、リーフィーシードラゴンのことを思い出しました。これまでもリーフィーシードラゴンの仲間のタツノオトシゴやウィーディーシードラゴンのお話しはさせて頂きましたが、実は一番好きなリーフィーシードラゴンについてはお話ししたことがありませんでした。そこで今回は、このリーフィーシードラゴンのお話しです。 リーフィーシードラゴンはタツノオトシゴやウィーディーシードラゴンと同じ、トゲウオ目ヨウジウオ科に属する魚です。残念ながらハワイには生息しておらず、オーストラリアの南西部にのみ生息しています。体長は大きいもので40cmほどになり、細長い口で大型の動物プランクトンなどをストローのように吸って捕食しています。オスがお腹の中(育児嚢)でメスの産んだ卵を育てるのも、タツノオトシゴやウィーディーシードラゴンと一緒です。 リーフィーシードラゴンの一番の特徴は、やはり海藻に擬態したその外見でしょう。ウィーディーシードラゴンよりもさらに多くの海藻のような付属器官(皮弁)がたくさん付いています。この皮弁により、褐藻類に非常によく似た姿にカモフラージュしているのです。水の中を海藻のようにひらひらとゆっくり泳いでいる姿は優雅で、何時間でも見ていられるような気がします。...

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ジャイアント・ケルプの話

先日、ハワイ大学で海藻のレクチャーをしました。一口に海藻と言っても、植物プランクトンからジャイアント・ケルプと呼ばれる全長50mにも達するものまで様々です。ハワイにはジャイアント・ケルプは存在しないのですが、授業にも度々出てきますし、以前から個人的には非常に興味のある海藻です。そこで今回は、このジャイアント・ケルプについてお話しさせて頂きたいと思います。 ジャイアント・ケルプは褐藻綱コンブ目コンブ科に属する海藻です。ジャイアント・ケルプ(Giant Kelp)というのは英語の一般名で、日本語ではオオウキモとも呼ばれています。最大の特徴はやはりその大きさで、海藻の中では世界最大になります。成長が早いことで知られていて、1日に50cm成長するとも言われています。1日ビデオを回してその成長を早回しで見てみたいですね。茎状部には浮き袋が付いていて、それによって海底から海面に向かって伸びていくことができます。 ジャイアント・ケルプは主に北太平洋の寒い海に生息していて、密集して生えているケルプの森は他の生物たちの重要な生息場となっています。よく、ラッコが海藻を体に巻きつけている画像がありますが、あの巻きついている海藻がジャイアント・ケルプです。ラッコは寝ている間に潮に流されないように、ジャイアント・ケルプを巻きつけているそうです。...

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クエの話

以前、タマカイ(ジャイアントグルーパー)のお話をしましたが、このタマカイに似た大型魚にクエがいます。クエは日本では高級食材として有名で、私も一度食べてみたいと思っていますが、ハワイには分布していないので、食用として見かけることもありません。今年の夏に名古屋港水族館でクエを見ることができ、すごく嬉しかったです。そこで今回は、クエのお話をさせて頂きたいと思います。     クエはタマカイと同じ、スズキ目ハタ科マハタ属に属する魚です。体長は60-100cmで、日本にいるハタの仲間ではタマカイの次に大きいとされる魚の一つです。南日本から東シナ海、フィリピン沿岸の比較的浅い岩礁やサンゴ礁に生息しています。クエを漢字で書くと九絵、英語名ではLongtooth grouperと呼ばれます。大きな口で魚やイカなどを丸飲みにして捕食します。     クエは九州ではアラとも呼ばれますが、同じスズキ目ハタ科アラ属に属するアラとは別です。クエは鍋料理として食されることが多く、九州ではアラ鍋といえばクエの鍋ですが、関東でアラ鍋というと、アラ属のアラの鍋のことを指すようです。そういえば、クエが高価なため、アブラボウズという別の魚での偽装事件なんていうのもあるようですね。アブラボウズも食べ過ぎなければ美味しいそう(油分が多いので食べ過ぎると消化できない)ですが、できれば本物のクエ鍋をいただいてみたいですね。...

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オオカミウオの話

オオカミウオの話 子供の頃よく行く水族館に寒い海に住む魚の水槽があって、その中の怖い顔をした魚に釘付けになっていました。ハワイなどの暖かい海に住む魚と違い、寒い地域に住む魚はあまりカラフルではなく、ちょっと強面の物が多い気がします。今回は、この子供の頃に釘付けだった北国の魚、オオカミウオのお話をさせて頂きたいと思います。 オオカミウオはスズキ目ゲンゲ亜目オオカミウオ科オオカミウオ属に属する魚です。オホーツク海、ベーリング海などの寒い海に分布し、日本でも東北地方や北海道で見られます。北大西洋に住むものも合わせると、オオカミウオ属の魚は4種ほど存在します。日本名の「オオカミウオ」は、英語名の”Wolffish”をそのまま訳したもの(日本で見られるオオカミウオはBaring wolffishと呼ばれます)ですと。体長は1mほどで、水深50-100mの岩礁に住んでいます。オオカミウオは鋭そうな前歯と臼歯のような奥歯、それに強い顎を持っていて、貝などを貝殻ごと砕いて食べることができます。また、カニなどの甲殻類も好んで食べるようです。 オオカミウオは日本ではあまり食用にはされませんが、食べられない魚というわけではなく、北欧などでは食べられています。美味しいと言われるギンポの仲間ですから、食べてみたら美味しいんじゃないかとは思いますが、やっぱりあの顔は申し訳ないですが食欲をそそられませんよね。...

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アナゴの話

前回はチンアナゴの仲間のニシキアナゴのお話しをさせて頂きました。チンアナゴもニシキアナゴもウナギ目アナゴ科の魚で、あの食用になるアナゴとも同じ仲間になります。そこで今回は、私達がよく食べている「アナゴ」についてお話ししたいと思います。 私達が天ぷらやお寿司で頂くアナゴは「マアナゴ」という魚で、ウナギ目アナゴ科クロアナゴ亜科に属しています。体長はオスが40cm、メスが90cmと、メスの方がかなり長くなっています。体側に沿って白い点が並んでいるのと、口を閉じた時に下あごが上あごに隠れるのが特長です。日本では北海道より南から東シナ海にかけての浅い海の砂泥底に広く分布していますが、食用となる時は東京湾の羽田沖で捕れるものが特に「江戸前」とされています。昼間は岩などの隙間に身を隠し、夜になると泳ぎだして小魚や貝類、ゴカイなどを捕食する夜行性です。「アナゴ」という名前は、昼間穴に潜んでいる姿から付けられたそうです。 アナゴやウナギの幼生はレプトケファルスト呼ばれる平たくて透明な魚です。特にマアナゴの幼生はノレソレなどと呼ばれ、食用にされることもあります。日本では食用としてお馴染みのアナゴですが、ハワイではほとんど見かけることがなく、お寿司もアナゴの代わりにウナギを出している店がほとんどです。このアナゴの話を書いていて、久しぶりに美味しいアナゴのお寿司が食べたいな、と思ってしまいました。...